ネコ可愛いですよね。
私の実家では2頭飼っています。かつては4頭でしたが、2頭は星になってしまいました。
ネコは野生動物ではなく飼育動物ですし、野良でも人の生活圏で暮らす個体が多いため、ロードキルは都市や住宅地などでも起こり易いです。
そのため、一般的にはタヌキやハクビシンよりもネコの遺体を目にする機会の方が多いかもしれません。
私の収集した標本も、タヌキ、ハクビシンに次いでネコが多いので、ペットの中でもロードキルの被害に合いやすいのではないかと思われます。
ペット(伴侶動物)として認識される動物については、解剖・標本作成に抵抗や嫌悪感を抱く方も多いかもしれません。
しかし、「ペットだからダメ」「野生動物だから良い」という考え方は、生命の価値を差別しているようで私は好きではありませんし、標本として残すことの意義はどんな動物に対しても同じであると考えています。
また、ペットだからこそ残せる貴重な標本というものもあります。(これについては次回)
私の知る患者さんは、飼っていたネコが亡くなったので剥製にして残そうと業者に頼んだら、剥製にできる状態ではなかったため、骨格標本になって帰ってきたそうです。
とはいえ、嫌だと言う方の気持ちも否定するつもりもありません。その気持ちも受け入れつつ、あくまでも動物を研究する者としてお話させていただきたいと思います。
前置きが長くなりましたが、ネコの頭骨を見ていきましょう。
正面
上から
下から
側面
タヌキ、キツネ、ハクビシン、アナグマに比べてかなり鼻が短く、頭全体が丸い印象ですね。
そして頭蓋のサイズに対し眼窩の割合が大きく、真正面を向いてることもわかるでしょう。
ネコも夜行性ですが、今まで紹介した動物達と違って嗅覚よりも視覚を頼りに餌を探します。
そのため、鼻腔(鼻の中の空間)が狭く、その分眼窩が大きく前を向くように進化しました。
ネコの祖先は樹上生活をしており、木の上から獲物を待ち伏せて捕獲していました。現代のトラやヒョウなどもそうですよね。
この場合、匂いを探知する必要がなく、むしろ獲物をより早く見つけること、飛びかかるために正確な距離感を把握することが重要になるので視覚の発達が必要だったのです。
その能力を受け継いだネコも木登りが得意で動くものを正確に捉えることができますよね。
面積が狭いことを表す意味で『猫の額』という慣用句がありますが、鼻から前頭部までの距離が短い特徴からきた言葉であることもこの骨を見れば分かりますね。
次に歯を見てみましょう、
上顎の歯
下顎の歯
何か少ないですね。
ネコ科は純粋な肉食動物です。獲物に噛みついて離さない&とどめを刺すための犬歯、肉を噛み切るための裂肉歯、あと小さい門歯、それだけで構成されています。
繊維質の植物は消化に時間がかかるので、雑食性や草食性の動物は飲み込む前によく噛んで擂り潰すための平らな臼歯をもっています。しかし、肉は塊のまま飲み込めるため、ネコには平らな臼歯を必要としません。その分歯の数がタヌキやキツネに比べて少ないんです。
裂肉歯は峰の部分が刃物のようにシャープで、上下の歯がハサミのように噛み合うことで肉を切り裂きます。
実は、それが困ったことを引き起こします。
市販のネコの餌といえば、所謂「カリカリ」と呼ばれるドライフードですが、先に述べたように、ネコには臼歯がありません。そのため硬いドライフードは食べにくいんです。
例えるならハサミでドングリを切るようなものです。ドライフードばかりより時々食べ易い大きさに切ったお肉も与えてあげると良いでしょう。
ペットとして進化してきた動物も骨には野生の歴史が残されているのです。
それでは、また。