皆さん、タヌキはお好きですか?
私はもちろん大好きです。見た目の可愛さだけでなく、生態も形態も興味深く魅力的な動物ですよね。タヌキの毛皮もモフモフモフモフで気持ちいいんですよ。
世間的にもタヌキは可愛い動物という印象があり、信楽焼のタヌキは縁起物としても重宝されています。その反面、昔話・民話では人を騙す悪賢い動物やお間抜けな動物として、現代の漫画・アニメ等ではコミカルなキャラクターとして扱われることが多く、農家にとっては害獣でもあり、「タヌキ親父」なんて蔑称にも使われていることから、「誉め言葉として例えに使うには憚られる対象」という印象が強いのではないでしょうか。
そんなタヌキですが、一般的にあまり知られていない生態の一つに、『一夫一妻制で子育てをする』という哺乳類の中では珍しい繁殖形態があります(哺乳類は一夫多妻、あるいは母親のみで子育てする種が多い)。
それにあやかって、タヌキには「夫婦円満、家庭円満」のご利益があるとも言われていおり、タヌキ好きな私としては「タヌキみたいな夫婦だね」って言われたなら喜ばしいことです。
そんなタヌキ好きな私ですが、1月25日は我ら夫婦(以下、S夫妻)の結婚記念日で、今年11周年になるのです。めでたいね!
S夫妻は夫婦喧嘩をしたことがなく、妻が「夫婦喧嘩をしてみたい」と言うほどケンカに縁のない夫婦であります。単純に二人とも争い事を好まない性格だからというのもありますが、仲良く暮らしていくための取り組みもしているんです。
という訳で、たまには血生臭い話題を抜きにして、S夫妻の夫婦円満の秘訣をご紹介したいと思います。しばし惚気話にお付き合いください。
S夫妻は同じ精神科の病院で働く看護師同士です。そして互いに精神科看護の実践・学習を通して、人間関係・信頼関係を構築し良好に保つためのスキルも身に付けてきました。そうした知識やスキルは夫婦が仲良く暮らしていくことにも活かすことができます。
そこで、結婚や出産の際にいくつかの約束事を決めてきました。それが以下の5つ
1.相手の話を受け止める
2.気持ちや考えを素直に伝える
3.毎日笑わせる
4.毎日感謝し、褒める
5.名前で呼び合う
1,2,5は夫婦間で決めたこと、3,4は夫が妻のために心がけていることです。では、これらについて解説していきましょう。

まず最初は、「相手の話を受け止める」こと。
関係構築にコミュニケーションは不可欠です。自分の話を真剣に聴いてもらえると、「この人は自分に関心を寄せてくれている」と実感できますよね。そして、話したいことを話しても受け止める態度で聴いてくれる人に対しては、自分の素直な感情や考えを表出できる信頼感を抱くようになります。
愛情の対義語は文脈により複数の言葉が挙げられますが、その中でもメジャーなのは「無関心」でしょう。話を聴いてくれなかったり、自分の話ばかりされたりすると、「自分に関心をもってくれていない」と感じ、結果として「愛されている実感がもてない」という感覚を抱かせ、関係を冷ややかにさせてしまいます。
子どもも、親に抱きしめられたり、愛のある言葉をかけられたりするだけでなく、「自分のことを見てくれているか、話を聴いてくれているか」という親の態度からも愛情の実感をはかっていると言われていますね。
以下にNGな聴き方の例を挙げていきます。

ケンカの原因の多くはこれです。
「トイレの蓋を閉めてほしい」という要望に対して、「お前はコップを放置してる」と、全く別の話題を持ち出して逆に相手を非難してくる人。いますねぇ。
論点を相手の非に向けることで、自分の非を認めずに済まそうという魂胆です。このような会話が続くと、相手に直してほしい行動があっても「言っても無駄だから言わないで我慢する」という選択しかできなくなります。しばらくはそれでも耐えられますが、同じ屋根の下で生活し続けているので、小さな不満でも積み重なって大きな不満の塊となり、一緒に暮らしていくことに限界を感じてしまいます。
S夫妻は、
1)何か指摘されたら、言い返さないでまずは相手の話を聴く。
2)そのうえで、相手の言い分が正しいと思ったら素直に謝る、行動を修正する。
3)自分の言い分があるなら、冷静に説明する。
4)双方の意見に相違がある時は、話し合ってすり合わせて妥協点を見つける。
という流れを保っていこうと約束しています。
自分の行動を指摘されるとムカッとするのはあって当然ですが、その感情のままに相手を非難すると話はこじれてしまいます。自分は問題と感じていなくても、「少なくとも相手に指摘したいと思わせる行動があったんだな」と考えることも大切でしょう。
どっちが正しいかと議論するのではなく、双方の考え方を理解し合う機会と捉えていけるといいですね。

相手が振ってきた話題に関して、自分も話したいことを思い出すのはよくあることですが、まずは相手の話を聴いてからでも良くない?
S夫妻は同じ職種・同じ職場で働いているので、共通の話題が挙がることは多いですが、相手が話している間は相槌以外口を挟まないようにしています。これは決めていたことではなく、自然とそういう形になっていました。

そして、うざがられるのは話題の先回り(造語)です。
図のように、何か話そうとすると勝手に話題を推測して「○○か?」「◇◇か?」とまくしたてられると、「それを今から話そうとしてるんだから、黙って聴いてろや!」ってなりますよね。
こういう人は、自分に興味のある話題のみを求めたり、話の内容よりも結論を出すことに意識が向いていることが多いので、会話中の態度からも関心をもって聞いていないことが伝わってきます。
次のようなパターンもあります。
子「お腹痛い」
親「そう言ってまた学校休みたいって言うんでしょ。さっさと学校行きなさいっ!」
子(学校休もうと思ってないのに、勝手に決めつけられた。お母さんは僕のことそういう風に見てるんだ…)
⇒親に対する不信感が募る、自己肯定感が低くなる
というように、人が何か話してきたら「聴く側の心構え」を意識して話を受け止めてあげましょう。

さっきは「聴く側の心構え」の大切さを説明しましたが、「言う側の心構え」も大切です。
言いたいことが言えないということは、相手への遠慮があるのか、あるいは相手が「聴く側の心構え」をもっていないかのどちらかと考えられます。相手は言いたいことを言うのに、自分は言いたいことが言えないと、相手の意見だけが優先されて自分の考えや感情はないがしろにされてしまい、不公平・不平等と感じてしまいます。
「夫婦ってもっと対等な関係なんじゃないの?」
S夫妻は、夫が妻より年上で、職場での立場も上にあります。そのため、控えめな性格の妻は、家庭内においても夫に従うべきと考えていました。しかし、社会的にはいかなる関係であろうと、家庭での立場は平等であれかしというのが私の考えであり、妻には忌憚なく意見して欲しいので、「言いたいことは遠慮せず話してほしい」と伝えたうえで、妻が安心して意見できるように「聴く側の心構え」を実践しています。
とはいえ、相手の話を受け止めようと考えていても、相手が不躾に話してきたり批判的に話してきたりしたら、今度は聴く側のストレスが溜まってしまいます。
そこで大事なのが、「言いたいことは何でも言っていいけど、相手への配慮はしてね」ってことです。

好き嫌いや趣味趣向、生まれや育ちも違う二人が同じ環境で生活を送っていくのが夫婦です。生活習慣や考えの違いから、相手の行動や言葉遣いが気にあることも一つや二つではないでしょう。でも、自分の考えと違うからといって、「あなたが間違っている」とか、「そんなことするなんて信じられない」とか、否定的・攻撃的に訴えたら、言われた方はどんな気持ちになるでしょうね?
傷つけたくて結婚したんじゃないんだし、相手にも相手の考えがあるので、自分の意見や要望を伝える時は、「これを言ったらどんな気持ちになるかな?」と一旦考えましょう。この時、「傷つけるかもしれないから、やっぱりやめよう」と踏みとどまったら意味がありません。
「どう言ったら傷つけないかな?」
「どんな言い方だったら受け入れやすいかな?」
という考えを挟み、「相手の面目を保つ配慮」が大事です。
ここまで読んで気付いたと思いますが、「聴く側の心構え」と「言う側の心構え」は夫婦の一方だけが意識していても成立しません。お互いが2つの心構えを理解したうえで実行してこそ効果を発揮するので、だからこそ結婚する時点で双方の合意が必要なのです。「結婚するにあたり、こういう約束をしよう」と言って、それに合意してくれないような人とは付き合いを考え直した方がいいかも…

結婚式の新郎新婦の挨拶では「笑顔の絶えない家庭を築いていきたいです」って常套句ですよね。でも、それを実現するために何か意識して取り組んでいる夫婦はどれほどいるでしょうか。
笑顔にはネガティブな感情を緩和し、ポジティブな感情を高めてくれる力があります。そして、自分を笑顔にしてくれる存在は安心感を与えてくれるので、その対象と共にいる空間や時間が「安心の場」となります。
仕事で嫌なことがあっても「家に帰ればMちゃん(妻)がいるから大丈夫」って考えられるようになったおかげで、大抵のストレスはその日のうちに消失します。
なので、妻にとっても自分が安心の場でいられるように「毎日妻を笑わせる」ことを自分に課しています。
「好きな人の笑顔を見ながら暮らせたら幸せじゃん」

夫が不機嫌だと妻も不安になって笑顔どころではありません。
恥を承知で打ち明けますが、私も娘が生まれたばかりの頃は、思い通りにいかない育児に困惑して不機嫌になってしまうこともありました。
ある日、妻の友達が「子どものことで旦那が不機嫌になると悲しくなるよね」と言い、妻も同意していた会話を横で見て、「これではいけない!」と思い直しました。
それまでは「笑顔にする」ことばかり意識していましたが、実はそれと同等に「笑顔を奪わない」ということも大事なんですね。
では、どうやって笑顔にしていきましょうか?
笑わせようと考えたら、「ユーモアで笑わせる」ということが真っ先に思い浮かぶと思いますが、これにはテクニックが必要なので「私にもは無理だな」と諦めてしまう人もいるかもしれません。
でも、ユーモアは必要ないんです。人は「喜び」「安心」でも笑顔になれるので、相手が喜ぶことをする、自分自身が笑顔でいることを意識するだけでも笑顔を引き出せます。
そして、先述のように「笑顔を奪う要因を排除する」ことも忘れないように。
「どんなことで悲しむのか?」
「何を嫌がるのか?」
「困っていること、悩んでいることはないか?」
「自分が負担をかけていないか?」
って考えてみましょう。
妻は家事が苦手なので、家事の大半を私が担っています。すると妻は「私は何をしたらいいの?」と聞いてくるのですが、「Mちゃんはニコニコしてそばにいてくれると嬉しいな」と返しています。
そりゃもう、とってもいい笑顔を見せてくれるんですよ。

続いて、ちょっと専門的な話になりますが、【マズローの欲求5段階説】はご存知ですか?
マズローさんは、人間の欲求は「生理的欲求」「安全欲求」「所属と愛の欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」の5階層に分かれており、下位の欲求が満たされると上位の欲求を求めるようになると提唱しました。
これまでに説明してきた項目は、主に「安全欲求」「所属と愛の欲求」に関わる行動で、「感謝する、褒める」という行動は、さらに上の階層にある「承認欲求」に関わる行動となります。
自分の行いを「良いこと」と認めてくれる言葉をかけられると嬉しいですよね。このような言葉は、「行動だけでなく存在そのものを認められている」という気持ちを生み出し、自信をつけ、自尊心や自己肯定感を高めていき、より良い夫婦関係を作っていけるでしょう。

「褒めるの得意じゃないんだよね」って言う人もいますが、それは相手に対する関心と観察眼が足りないのかもしれません。
当たり前のことをしていても、それを当たり前にやってくれていること自体がありがたと気付いたり、自分が知らないところで自分のために何かしてくれていたり、感謝や褒めることって探せば結構たくさんあるものです。たまにはスマホやテレビから目を離して、妻の行動をよく観察してみましょう。
結婚11年目でも毎日「愛してる」「大好き」「可愛い」の言葉をかけることを欠かさないからこそ、妻に対する感謝・賞賛の気持ちは尽きることがありません。

最後は、「名前で呼び合う」です。
かつての恋人同士も結婚して夫婦となり、子どもが生まれ、孫が生まれ、年月とともに家庭内における役割や立場は変化していきます。
・子どもが生まれると父親・母親になり、「パパ」「ママ」と呼び合う
⇩
・孫が生まれると祖父・祖母になり、「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼び合う
家庭内役割が互いの呼称として定着していくと、家庭内役割に沿った扱いに偏ってしまいかねません。でも、子どもにとって「ママ」であったり、孫にとって「おばあちゃん」であったりしても、夫にとってはいつまでも「妻」「恋人」なんです。
この姿勢が維持できるかどうかで妻への態度、妻からの反応も変わります。

また、夫婦といえども大人は一歩外に出たら社会人として見られます。
例えば、職場では職種や肩書、立場に沿った呼び方があり、【看護師なら看護師として】、【先輩なら先輩として】、【部下なら部下として】の振る舞いが求められます。
もちろん、「○○さん」と個人を尊重してもらっていますが、それでも「職場にいる間は、看護師として見られている」という意識はもたずにいられませんから、やっぱり肩がこりますよね。
そして家に帰ると、また【家庭内役割をもった自分】になるわけです。
このように、人は誰かと関わる時はどこにいても【役割・立場をもった個人】として生きていかなければならず、一人でいる時しか【ありのままの自分】でいられる時間はありません。でも、家庭をもっていると家でも一人になれる時間はそうそう無いのも現実です。
もちろんそれぞれ家庭内役割を果たさねばならない時もありますが、夫婦も相手がありのままの自分でいられる時間を意図的に作ることも必要でしょう。
その意思表明の一つとして、「役割で呼ばない」「結婚前と同じ呼び方をする」という約束をしていました。
これまでに述べてきた取り組みや考え方は、夫婦間に限らず、あらゆる人間関係においても重要だと思います。
但し、あくまでも【自分を大事にしてくれる人】が対象です。悪意をもって接してくる人や自分本位で他者を蔑ろにする人を相手に、こんなことをしてあげる必要はありません。嫌な奴はどれだけ優しくされても良い人にはならないものです。
ずいぶん長くなってしまいましたが、こんな話をしていると、さぞかし私が立派な夫であるかのように誤解してしまうかもしれません。しかし、実際はそんなちゃんとした夫ではないんですよ。
「心掛けている」けど、すべてを「完璧に実行できている」わけではありません。
「何でも言い合える仲でいよう」と言いつつも、私の趣味やわがままに口を出さず黙って付いてきてくれる妻の優しさと忍耐に甘えてしまっている自覚はあります。でも、だからこそ妻の言葉には真剣に耳を傾け、感謝・愛情・敬意を言葉と行動で示していかなければ、愛想を尽かされてしまいます。
S夫妻は目立つことが苦手で、人目につかずひっそり生きていたい二人なので、ライオンやゾウ、キリンなど華やかな動物園のスターになるより、人より優れたものをもっていなくても、タヌキのようにひっそりと身を寄せあって生きていく方が性に合っています。
『タヌキらしい生き方』に誇りをもって、S夫妻は今日もお互いと娘に愛を注ぎ合うのでした。
それでは、また。