スカベンジャーの標本部屋

本業は看護師ですが、趣味で動物骨格標本を作成しています。

スカベンジャーin静岡

 浜松市で開催される看護系学会で研究発表するため初めて静岡に行ってきました。

 

 岩手から浜松までは移動時間が長いので前泊する予定で25日に出発。

 新幹線は順調に進んでいましたが、福島県に入ったあたりで妻から「大きい地震来たけど大丈夫?」とLINEが届いたタイミングで新幹線が止まり、結局100分程度遅れて東京に到着し、東海道新幹線の切符も席を取り直すことに。

 折り良くすぐ出発できたため熱海駅に着いたのは当初の予定から2時間弱のずれで済みました。

 

 「浜松の学会なのに熱海で降りたの?」と疑問に思いますよね?

 静岡といえば伊豆半島に熱川バナナワニ園やアニマルキングダム、伊豆シャボテン公園など、動物好きには目移りする施設がたくさんあるんです。

 そんな魅力的な施設がたくさんある中で、私が行きたかったのは『体感型動物園iZoo』。ここに行くためだけに途中下車してレンタカー代3万円の出費を追加しました。

 

 iZooは世界的にも希少な爬虫類が数多く展示されているだけでなく、繁殖にも力を入れていて、本でしか見たことのない憧れの爬虫類の生きた姿を間近で見られる施設です。

 そりゃあ行くしかないでしょ。

 

到着

 

 台風直前の雨降りの中、初めて乗る車で初めての土地を走るのは緊張感も高まりますが、新幹線の遅延によって営業時間に間に合うかの緊張感の方が強かったと思います。

 

 

 入園して最初に出迎えてくれるのがこの子たち。ここから既に「希少性」の感覚がバグってきます。

 

 その先も、どこを見ても素敵な種、個体が並び、感激しっぱなしでした。

 

可愛い

 

 見ていて気付いたのは、ほとんどの個体が人に慣れていること。自ら客に近付いてくる個体も多くいました。そして、爬虫類を飼っていると爬虫類の匂いがするものですが、ここでは最小限に抑えられていることも驚嘆しました。深呼吸してみても鼻粘膜が刺激されないんです。

 飼育経験者なら分かるでしょうけど、この規模の個体数を抱えながら匂いをここまで抑えられるのはかなり凄いことだと思います。

 飼育環境や展示の仕方を見ても、生息地の再現・個体への配慮がしっかりされていて、「爬虫類が好きな人」が設計していると感じました。

 

可愛い

 

 地元企業とコラボした爬虫類と暮らす家の提案も面白い手法で、家に帰ってこんな出迎えされたらたまりませんね。

 

アシナシトカゲ

 

 国内流通が当たり前になっている種でも、田舎の民にとっては「地元のショップでは見ることのできない種」というのも、たくさんいます。

 どの種も魅力的なのですが、個人的にはアシナシトカゲを見られたのは嬉しかったです。

 ヘビより目付きが悪く、動きもぎこちないため、あまり好まれるタイプではないものの、むしろそこが魅力的であり、過去にも実物を見たことはあれど、何度見ても可愛らしいと感じます。

 

 インパクトでいえばイリエワニ(水中にいて写真は撮れず)。とにかくデカい。日本に暮らしていてこれほど大きな爬虫類に遭遇することは皆無なので、想像を絶する巨大さに言葉を失います。妻や娘が見たらどんなリアクションするんだろうなと考えてしまいますね。

 後から来たカップルも、「えっ?えっ?マジ!?えっ?デカッ!えっ?」と戸惑いを隠せない様子。

 

 その他にも写真はバチバチ撮ってきましたが、ケージ越しでは綺麗に写せないものが多く、ここで紹介できるのはあまりありません。やはり現地に行って実物を見るに限ります。

 ちなみに、なんで『体感型』なのか?それも行けばわかります。爬虫類の魅力を全身で体感しに行きましょう。

 ぜひまた行きたい所ではあるものの、岩手から家族連れで行くにはアクセスが悪いので、次はいつ行けるかなぁ。

 

 さて、izooを出たら温泉&夕食を済ませ、浜松に向けてどしゃ降りの真夜中に車を走らせます。途中PAで仮眠をとり、ヤリスの狭さに後悔しつつ、 無事に浜松市へ到着。

 学会が始まり、そろそろ発表の準備をと考えていた矢先に父親から祖母が亡くなった旨の連絡、妻から換気扇が壊れた旨の連絡が立て続けに入り、でもここからじゃ何もできないので気にせず発表を済ませました。 

 色々気がかりを抱えつつも、他の発表を聞いて新しい知見を得て、同期らとセミナーを開催し、充実した学会ではありました。

 惜しむらくは、台風のせいで浜松を観光することができなかったことです。

 

 山梨でも地震があり、今朝また青森・岩手で大きめの地震があり、現地の人々の安全と交通への影響も心配しながら、帰路につく新幹線の中でこのブログを更新しております。

 

 それでは、また。

お引っ越し

 今回はアオダイショウのお引っ越ししたお話など。

 

 うちのアオダイショウは2010年に宮城県で採集した個体なので、少なくとも16歳を超えているのは確実なのですが、採集時点でアダルトサイズだったため、もしかしたら20歳近い可能性もあります。

 飼育下でのアオダイショウの寿命は15~20歳と言われているので、うちの子も棺桶に片足を突っ込んでいる年頃なのかもしれません。足ないけど...

 

 そんな老い先短いアオダイショウですが、まだまだ食欲旺盛で年々成長し続けています。ちょっと気性が荒い個体なので体長を測定したことはないものの、90㎝水槽内で身体を伸ばしてもまだ半分丸まっているくらいです。

 現在の90㎝スリム水槽(W90×D30×H36)でも十分な飼育スペースはあるのですが、余生を伸び伸び過ごせるよう飼育環境をより広いものにしたいと考え、ベーシックな90㎝水槽(W90×D45×H45)に移すことにしました。奥行きが15cm広がるだけですが、単純計算でも体積は1.5倍以上に増えるため、かなりゆったりした空間が確保できます。

 ですが、爬虫類専用ケージではなく、通常の水槽なので蓋は自作しました。アルミのフレームに鉢底ネットを嵌め込んだ簡素な作りで、制作費は2,000円位だったかな?

 

引っ越し後。顔が見えない

 

 というわけで、新しい水槽にお引っ越しも無事に済み、しばらくは新しい環境に戸惑い水槽内を徘徊していたアオダイショウも、翌朝には落ち着いていました。

 

引っ越し後の初エサやり。やはり顔が見えない

 

 3日後にエサのマウスを与えてみると最初警戒してましたが、匂いに気付くとすぐに食いついてきました。エサが食べられればもう安心。長生きして欲しいですね。

 

 あとはついでに水容器も交換しました。今までは水槽のサイズの関係もあって1.5Lほどのタッパーを2つ使用していましたが、水槽のサイズアップに合わせてより大きな容器(百均の靴ケースだったか)を用意しました。これで全身も余裕をもって浸かれます。

 蛇足ですが、元々のタッパーもアオダイショウの飼育当初から使っていたので、百均商品でも16年使用に耐えられることにも驚きです。

 

 私は動物が好きなので、これまでに様々な生き物を飼育してきましたが、このアオダイショウは現在私が唯一飼育している生き物でもあります。

 他の生き物を飼わないのは、うちのアパートはペット禁止なので飼育したくてもできないという理由もありますが、一番の理由は「生き物に対する誠実さが足りなくなる懸念」を抱いてしまったからです。 

 

 骨取りする者にとって、動物の遺体を入手することが一番のハードルとなるため、自分が飼育しているペットは確実に入手できる遺体とも言えます(骨にするかどうかは別として)。

 となると、その個体に対する愛情は持ちつつも、まだ元気に生きているのに心のどこかで「この子が死んだらどう捌くか」とか、「どんな骨になるか」とか考えてしまうんです。アオダイショウが水槽から逃げ出して室内を徘徊していた時も、外に逃げられた場合を想像して、個体と環境への心配をするとともに、「遺体が手元に残らなくなる」ことを心配してしまう自分がいました。

 死ぬことを待ちわびているわけではないし、生きている姿にも興味・関心はあり愛情をもって接しているのですが、こうした考えをもってしまうことは飼育している生き物に対して誠実ではないと思い、今後自分では生き物を飼わないことにしています。

 ペットを飼うのにそんな面倒なこと考えているのは私くらいかもしれません。ですが、これまでに提供してもらった元飼育個体を扱った際に、適切な飼育をされなかった個体の身体に残された痛々しい痕跡も見てきたので、余計に生き物を飼育することに対する責任の重さを実感したことも考えを強化する一因になっていると思います。 

 

 はい。面倒くさいお話は終わり。

 アオダイショウの食事の次は娘と遊びに行きました。

 滝沢市役所前のビッグルーフの広場には滝沢を象徴する文化『チャグチャグ馬コ』を模した遊具が設置されています。

 

滝沢市役所をバックに

 

 頭は滑り台、四肢は各種の登り場、肛門はトンネルタイプの滑り台になっています。馬糞の気持ちになれますね。

 

遊具のわりに装束のデザインも細かいです

 

 そして、滝沢市では来週6月13日にチャグチャグ馬コが開催されます。農耕馬への感謝と労いの気持ちを込めて美しく着飾られた馬っコ達が列を成して進む様は壮観なので、是非ご覧いただきたいと思います。

 この馬コ達も維持費がかかるという理由から、飼育継続を断念するお家もあるそうです。

 結局、相応の覚悟と経費がなければ生き物を飼うことはできないのでしょうね。

 

 それでは、また。

活動再開

 更新が遅いのはもはや平常運転になっておりますが、5月に入り突如として暑くなってきたので、そろそろ骨作業も再開していきます。

 

 先週は某所の活動でムササビの解体を担当させていただき、また初体験の動物と触れあう機会に恵まれました。

 滑空のために進化した身体の特徴も興味深かったし、やはり可愛かったです。

 

 そして水曜日は奇特な方からいただいたフトアゴヒゲトカゲを解体しました。

 詳細は省きますが、劣悪な飼育環境から救出されたものの、リカバリーに至ることなく命を落としてしまった個体だそうです。

 

 

 研究のため内臓は全て取り除かれていましたが、四肢や尾が痩せ細っていて、生前の過酷な状況が窺えます。

 名前の通り全身にトゲトゲがあるので、刺さらないように注意しつつ、皮を剥いていきましょう。尾と指まわりが剥きづらく、剥き終わるのに2時間もかかってしまいました。鍛練が足りませんね。

 あとは部位毎に分けて、次の作業にとりかかれるまで冷凍庫にお戻りいただきましょう。

 

 フトアゴヒゲトカゲといえば、最近ハマっている『盛り上がらないデート(作・すずゆき)』のヒロイン灰田さんはフトアゴヒゲトカゲが大好きというキャラクターで、フトアゴヒゲトカゲに会えた時の笑顔が素敵なんですよ。

 とても面白い漫画なので、もどかしい恋愛漫画とフトアゴヒゲトカゲが好きな方は是非読んで欲しいです。

 

 そして昨日はタヌキ。

 

若い♂

 

 外傷は少なく、左肋骨が数本折れていた程度でした。

 秋に拾った子なので、体毛はダニとアメリカセンダングサだらけ。胃内容はギンナンだらけ。

 

 作業も終盤に差し掛かったところで父親が「タヌキを解体してるんですが、血とか大丈夫ですか?」って話してる声が聞こえてきて、見知らぬ女性を連れてきました。  

 たまたま来た保険屋さんが挨拶したかったそうですが、相手に了承得ていたとしてもこんな所人様に見せないで欲しい…

 こんなん見たら引くよね。と思いましたが、意外と興味をもってきて、「今度見付けたら拾ってきますね」って言われました。有難いとこではありますが、ロードキルの回収には様々なリスクが伴うので、場所だけ教えてもらえればいいんですが。

 

 今回のタヌキの他に、秋~冬に解体して冷凍していたタヌキ、ハクビシン、イタチ達も水浸けしておきました。

以上

 

 それでは、また。

 

伝統芸能と動物

 みなさんの地元にはどのような伝統芸能がありますか?

 全国各地に多様な伝統芸能があり、由来や内容も様々あるでしょう。

 私の愛する地元岩手県でも、知名度の高いものとしては「さんさ踊り」「チャグチャグ馬コ(うまっこ)」「鬼剣舞(おにけんばい)」「鹿踊(ししおどり)」などが挙げられますが、その他にも地域ごとにたくさんの伝統芸能が残され、地元民の誇りともなっています。

 

 こうした伝統芸能で扱われる道具や装束には、度々動物の身体の一部を利用したものが見られます。

 例えば、鬼剣舞では、頭のてっぺんに毛采(けざい)と言われる毛の束を載せていますが、これはウマのたてがみや尾の毛。鹿踊でも、鹿頭(ししがしら)にウマの黒い毛とシカの角が用いられています。

 

頭にあるトサカみたいなやつが毛采

 

 古から伝える文化に動物が用いられるのは、見た目の効果を狙うもの、その動物の生態や逸話に伴うご利益にあやかったものなど目的も様々です。私は伝統芸能には疎いですが、人の文化と動物との関わりを知ることには興味があるので、こうした動物を用いた道具や装束を見るとワクワクしてしまいます。

 

 さて、先日父親から「知り合いがイタチ捕まえたけどいるか?」とLINEが来ました。もちろん「欲しい」と即答しましたが、父曰く、他の知人も「さんさ踊りで使うから欲しい」と言っているとのこと。

 

 さんさ踊りと言えば、世界一の太鼓パレードとしてギネス認定されたこともある岩手を代表する伝統芸能の一つで、「岩手」の名称の由来とも関係する由緒ある文化でもあります。そんなさんさ踊りでイタチの皮がどのように使われているかご存知でしょうか?

 

 さんさ踊りのスタイルは地区ごとにも違いがありますが、一部の地区では「一八」と呼ばれる先導役・道化役がイタチをもって踊っています。イタチを用いるのは諸説ありますが、害虫・害獣を捕食してくれるので農業において益獣として扱われているのが由来と聞いています。

 このイタチは皮の中に詰め物をした仮剥製のような形にして使われます。見たことのある方はわかると思いますが、結構激しく振り回されるので、大切にメンテナンスしていても長年使っていくとどうしても傷んでしまいます。そのため、定期的に新しい素材を入手しなければなりませんが、今の時代イタチの毛皮を入手するのは容易ではありません。

 というわけで、私は骨だけを取り、皮は父の知人にお譲りすることにしました。

 

オスの成体でした

 

 皮は筒抜きして塩漬けのうえ父親へパス。

 四肢の末節骨(爪の付いてる指の骨)を皮に付けた状態でお渡ししたので、骨はパーツ不足になっちゃいましたが、仕方ありません。

 

 博物館など研究機関ならば骨も皮も保存するでしょうけど、私は学術目的だけでなく、動物の遺体や標本が人の役に立てる方法も模索しているので、「残せる標本は残すけど、必要とする人がいるなら必要とする人の元へ」というスタンスです。個人の利益より公共の利益、そして動物の死を無駄にせず有効活用していくことで、将来的に動物にとってより良い世の中に繋がるといいなと思っています。

 自然科学の標本にはならずとも、さんさ踊りという文化の維持を通して人文科学への貢献ができたらいいですね。

 

 もしかしたら、今年のさんさ踊りでは私の剥いたイタチが舞っているかもしれません。みなさんも岩手さおでんせ。

 

 それでは、また。

目指せ『タヌキ夫婦』

 皆さん、タヌキはお好きですか?

 私はもちろん大好きです。見た目の可愛さだけでなく、生態も形態も興味深く魅力的な動物ですよね。タヌキの毛皮もモフモフモフモフで気持ちいいんですよ。

 

 世間的にもタヌキは可愛い動物という印象があり、信楽焼のタヌキは縁起物としても重宝されています。その反面、昔話・民話では人を騙す悪賢い動物やお間抜けな動物として、現代の漫画・アニメ等ではコミカルなキャラクターとして扱われることが多く、農家にとっては害獣でもあり、「タヌキ親父」なんて蔑称にも使われていることから、「誉め言葉として例えに使うには憚られる対象」という印象が強いのではないでしょうか。

 

 そんなタヌキですが、一般的にあまり知られていない生態の一つに、『一夫一妻制で子育てをする』という哺乳類の中では珍しい繁殖形態があります(哺乳類は一夫多妻、あるいは母親のみで子育てする種が多い)。

 それにあやかって、タヌキには夫婦円満、家庭円満」のご利益があるとも言われていおり、タヌキ好きな私としては「タヌキみたいな夫婦だね」って言われたなら喜ばしいことです。

 

 そんなタヌキ好きな私ですが、1月25日は我ら夫婦(以下、S夫妻)の結婚記念日で、今年11周年になるのです。めでたいね!

 S夫妻は夫婦喧嘩をしたことがなく、妻が「夫婦喧嘩をしてみたい」と言うほどケンカに縁のない夫婦であります。単純に二人とも争い事を好まない性格だからというのもありますが、仲良く暮らしていくための取り組みもしているんです。

 という訳で、たまには血生臭い話題を抜きにして、S夫妻の夫婦円満の秘訣をご紹介したいと思います。しばし惚気話にお付き合いください。

 

 S夫妻は同じ精神科の病院で働く看護師同士です。そして互いに精神科看護の実践・学習を通して、人間関係・信頼関係を構築し良好に保つためのスキルも身に付けてきました。そうした知識やスキルは夫婦が仲良く暮らしていくことにも活かすことができます。

 そこで、結婚や出産の際にいくつかの約束事を決めてきました。それが以下の5つ

 

1.相手の話を受け止める

2.気持ちや考えを素直に伝える

3.毎日笑わせる

4.毎日感謝し、褒める

5.名前で呼び合う

 

 1,2,5は夫婦間で決めたこと、3,4は夫が妻のために心がけていることです。では、これらについて解説していきましょう。

 

 

 まず最初は、相手の話を受け止めること。

 関係構築にコミュニケーションは不可欠です。自分の話を真剣に聴いてもらえると、「この人は自分に関心を寄せてくれている」と実感できますよね。そして、話したいことを話しても受け止める態度で聴いてくれる人に対しては、自分の素直な感情や考えを表出できる信頼感を抱くようになります。

 愛情の対義語は文脈により複数の言葉が挙げられますが、その中でもメジャーなのは「無関心」でしょう。話を聴いてくれなかったり、自分の話ばかりされたりすると、「自分に関心をもってくれていない」と感じ、結果として「愛されている実感がもてない」という感覚を抱かせ、関係を冷ややかにさせてしまいます。

 子どもも、親に抱きしめられたり、愛のある言葉をかけられたりするだけでなく、「自分のことを見てくれているか、話を聴いてくれているか」という親の態度からも愛情の実感をはかっていると言われていますね。

 

 以下にNGな聴き方の例を挙げていきます。

 

 

 ケンカの原因の多くはこれです。

 「トイレの蓋を閉めてほしい」という要望に対して、「お前はコップを放置してる」と、全く別の話題を持ち出して逆に相手を非難してくる人。いますねぇ。

 論点を相手の非に向けることで、自分の非を認めずに済まそうという魂胆です。このような会話が続くと、相手に直してほしい行動があっても「言っても無駄だから言わないで我慢する」という選択しかできなくなります。しばらくはそれでも耐えられますが、同じ屋根の下で生活し続けているので、小さな不満でも積み重なって大きな不満の塊となり、一緒に暮らしていくことに限界を感じてしまいます。

 S夫妻は、

1)何か指摘されたら、言い返さないでまずは相手の話を聴く。

2)そのうえで、相手の言い分が正しいと思ったら素直に謝る、行動を修正する。

3)自分の言い分があるなら、冷静に説明する。

4)双方の意見に相違がある時は、話し合ってすり合わせて妥協点を見つける。

 という流れを保っていこうと約束しています。

 自分の行動を指摘されるとムカッとするのはあって当然ですが、その感情のままに相手を非難すると話はこじれてしまいます。自分は問題と感じていなくても、「少なくとも相手に指摘したいと思わせる行動があったんだな」と考えることも大切でしょう。

 どっちが正しいかと議論するのではなく、双方の考え方を理解し合う機会と捉えていけるといいですね。

 

 相手が振ってきた話題に関して、自分も話したいことを思い出すのはよくあることですが、まずは相手の話を聴いてからでも良くない?

 S夫妻は同じ職種・同じ職場で働いているので、共通の話題が挙がることは多いですが、相手が話している間は相槌以外口を挟まないようにしています。これは決めていたことではなく、自然とそういう形になっていました。

 


 そして、うざがられるのは話題の先回り(造語)です。

 図のように、何か話そうとすると勝手に話題を推測して「○○か?」「◇◇か?」とまくしたてられると、「それを今から話そうとしてるんだから、黙って聴いてろや!」ってなりますよね。

 こういう人は、自分に興味のある話題のみを求めたり、話の内容よりも結論を出すことに意識が向いていることが多いので、会話中の態度からも関心をもって聞いていないことが伝わってきます。

 次のようなパターンもあります。

子「お腹痛い」

親「そう言ってまた学校休みたいって言うんでしょ。さっさと学校行きなさいっ!」

子(学校休もうと思ってないのに、勝手に決めつけられた。お母さんは僕のことそういう風に見てるんだ…)

 ⇒親に対する不信感が募る、自己肯定感が低くなる 

 

 というように、人が何か話してきたら聴く側の心構えを意識して話を受け止めてあげましょう。

 


 さっきは「聴く側の心構え」の大切さを説明しましたが、言う側の心構えも大切です。

 言いたいことが言えないということは、相手への遠慮があるのか、あるいは相手が「聴く側の心構え」をもっていないかのどちらかと考えられます。相手は言いたいことを言うのに、自分は言いたいことが言えないと、相手の意見だけが優先されて自分の考えや感情はないがしろにされてしまい、不公平・不平等と感じてしまいます。

 夫婦ってもっと対等な関係なんじゃないの?

 

 S夫妻は、夫が妻より年上で、職場での立場も上にあります。そのため、控えめな性格の妻は、家庭内においても夫に従うべきと考えていました。しかし、社会的にはいかなる関係であろうと、家庭での立場は平等であれかしというのが私の考えであり、妻には忌憚なく意見して欲しいので、「言いたいことは遠慮せず話してほしい」と伝えたうえで、妻が安心して意見できるように「聴く側の心構え」を実践しています。

 とはいえ、相手の話を受け止めようと考えていても、相手が不躾に話してきたり批判的に話してきたりしたら、今度は聴く側のストレスが溜まってしまいます。

 そこで大事なのが、「言いたいことは何でも言っていいけど、相手への配慮はしてね」ってことです。

 

 

 好き嫌いや趣味趣向、生まれや育ちも違う二人が同じ環境で生活を送っていくのが夫婦です。生活習慣や考えの違いから、相手の行動や言葉遣いが気にあることも一つや二つではないでしょう。でも、自分の考えと違うからといって、「あなたが間違っている」とか、「そんなことするなんて信じられない」とか、否定的・攻撃的に訴えたら、言われた方はどんな気持ちになるでしょうね?

 傷つけたくて結婚したんじゃないんだし、相手にも相手の考えがあるので、自分の意見や要望を伝える時は、「これを言ったらどんな気持ちになるかな?」と一旦考えましょう。この時、「傷つけるかもしれないから、やっぱりやめよう」と踏みとどまったら意味がありません。

 「どう言ったら傷つけないかな?」

 「どんな言い方だったら受け入れやすいかな?」

 という考えを挟み、相手の面目を保つ配慮が大事です。

 

 ここまで読んで気付いたと思いますが、「聴く側の心構え」と「言う側の心構え」は夫婦の一方だけが意識していても成立しません。お互いが2つの心構えを理解したうえで実行してこそ効果を発揮するので、だからこそ結婚する時点で双方の合意が必要なのです。「結婚するにあたり、こういう約束をしよう」と言って、それに合意してくれないような人とは付き合いを考え直した方がいいかも…

 

 

 結婚式の新郎新婦の挨拶では「笑顔の絶えない家庭を築いていきたいです」って常套句ですよね。でも、それを実現するために何か意識して取り組んでいる夫婦はどれほどいるでしょうか。

 笑顔にはネガティブな感情を緩和し、ポジティブな感情を高めてくれる力があります。そして、自分を笑顔にしてくれる存在は安心感を与えてくれるので、その対象と共にいる空間や時間が「安心の場」となります。

 仕事で嫌なことがあっても「家に帰ればMちゃん(妻)がいるから大丈夫」って考えられるようになったおかげで、大抵のストレスはその日のうちに消失します。

 なので、妻にとっても自分が安心の場でいられるように毎日妻を笑わせることを自分に課しています。

 好きな人の笑顔を見ながら暮らせたら幸せじゃん

 

 

 夫が不機嫌だと妻も不安になって笑顔どころではありません。

 恥を承知で打ち明けますが、私も娘が生まれたばかりの頃は、思い通りにいかない育児に困惑して不機嫌になってしまうこともありました。

 ある日、妻の友達が「子どものことで旦那が不機嫌になると悲しくなるよね」と言い、妻も同意していた会話を横で見て、「これではいけない!」と思い直しました。

 それまでは「笑顔にする」ことばかり意識していましたが、実はそれと同等に笑顔を奪わないということも大事なんですね。

 

 では、どうやって笑顔にしていきましょうか?

 笑わせようと考えたら、「ユーモアで笑わせる」ということが真っ先に思い浮かぶと思いますが、これにはテクニックが必要なので「私にもは無理だな」と諦めてしまう人もいるかもしれません。

 でも、ユーモアは必要ないんです。人は「喜び」「安心」でも笑顔になれるので、相手が喜ぶことをする、自分自身が笑顔でいることを意識するだけでも笑顔を引き出せます。

 そして、先述のように「笑顔を奪う要因を排除する」ことも忘れないように。

 「どんなことで悲しむのか?」

 「何を嫌がるのか?」

 「困っていること、悩んでいることはないか?」

 「自分が負担をかけていないか?」

 って考えてみましょう。

 

 妻は家事が苦手なので、家事の大半を私が担っています。すると妻は「私は何をしたらいいの?」と聞いてくるのですが、「Mちゃんはニコニコしてそばにいてくれると嬉しいな」と返しています。

 そりゃもう、とってもいい笑顔を見せてくれるんですよ。

 

 

 続いて、ちょっと専門的な話になりますが、マズローの欲求5段階説】はご存知ですか?

 マズローさんは、人間の欲求は「生理的欲求」「安全欲求」「所属と愛の欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」の5階層に分かれており、下位の欲求が満たされると上位の欲求を求めるようになると提唱しました。

 これまでに説明してきた項目は、主に「安全欲求」「所属と愛の欲求」に関わる行動で、「感謝する、褒める」という行動は、さらに上の階層にある「承認欲求」に関わる行動となります。

 

 自分の行いを「良いこと」と認めてくれる言葉をかけられると嬉しいですよね。このような言葉は、「行動だけでなく存在そのものを認められている」という気持ちを生み出し、自信をつけ、自尊心や自己肯定感を高めていき、より良い夫婦関係を作っていけるでしょう。

 

 

 「褒めるの得意じゃないんだよね」って言う人もいますが、それは相手に対する関心と観察眼が足りないのかもしれません。

 当たり前のことをしていても、それを当たり前にやってくれていること自体がありがたと気付いたり、自分が知らないところで自分のために何かしてくれていたり、感謝や褒めることって探せば結構たくさんあるものです。たまにはスマホやテレビから目を離して、妻の行動をよく観察してみましょう。

 結婚11年目でも毎日「愛してる」「大好き」「可愛い」の言葉をかけることを欠かさないからこそ、妻に対する感謝・賞賛の気持ちは尽きることがありません。

 

 

 最後は、「名前で呼び合う」です。

 かつての恋人同士も結婚して夫婦となり、子どもが生まれ、孫が生まれ、年月とともに家庭内における役割や立場は変化していきます。

・子どもが生まれると父親・母親になり、「パパ」「ママ」と呼び合う

  ⇩

・孫が生まれると祖父・祖母になり、「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼び合う

 

 家庭内役割が互いの呼称として定着していくと、家庭内役割に沿った扱いに偏ってしまいかねません。でも、子どもにとって「ママ」であったり、孫にとって「おばあちゃん」であったりしても、夫にとってはいつまでも「妻」「恋人」なんです。

 この姿勢が維持できるかどうかで妻への態度、妻からの反応も変わります。

 

 

 また、夫婦といえども大人は一歩外に出たら社会人として見られます。

 例えば、職場では職種や肩書、立場に沿った呼び方があり、【看護師なら看護師として】、【先輩なら先輩として】、【部下なら部下として】の振る舞いが求められます。

 もちろん、「○○さん」と個人を尊重してもらっていますが、それでも「職場にいる間は、看護師として見られている」という意識はもたずにいられませんから、やっぱり肩がこりますよね。

 そして家に帰ると、また【家庭内役割をもった自分】になるわけです。

 このように、人は誰かと関わる時はどこにいても【役割・立場をもった個人】として生きていかなければならず、一人でいる時しか【ありのままの自分】でいられる時間はありません。でも、家庭をもっていると家でも一人になれる時間はそうそう無いのも現実です。

 もちろんそれぞれ家庭内役割を果たさねばならない時もありますが、夫婦も相手がありのままの自分でいられる時間を意図的に作ることも必要でしょう。

 その意思表明の一つとして、「役割で呼ばない」「結婚前と同じ呼び方をする」という約束をしていました。

 

 これまでに述べてきた取り組みや考え方は、夫婦間に限らず、あらゆる人間関係においても重要だと思います。

 但し、あくまでも【自分を大事にしてくれる人】が対象です。悪意をもって接してくる人や自分本位で他者を蔑ろにする人を相手に、こんなことをしてあげる必要はありません。嫌な奴はどれだけ優しくされても良い人にはならないものです。

 

 ずいぶん長くなってしまいましたが、こんな話をしていると、さぞかし私が立派な夫であるかのように誤解してしまうかもしれません。しかし、実際はそんなちゃんとした夫ではないんですよ。

 「心掛けている」けど、すべてを「完璧に実行できている」わけではありません。

 「何でも言い合える仲でいよう」と言いつつも、私の趣味やわがままに口を出さず黙って付いてきてくれる妻の優しさと忍耐に甘えてしまっている自覚はあります。でも、だからこそ妻の言葉には真剣に耳を傾け、感謝・愛情・敬意を言葉と行動で示していかなければ、愛想を尽かされてしまいます。

 

 S夫妻は目立つことが苦手で、人目につかずひっそり生きていたい二人なので、ライオンやゾウ、キリンなど華やかな動物園のスターになるより、人より優れたものをもっていなくても、タヌキのようにひっそりと身を寄せあって生きていく方が性に合っています。

 『タヌキらしい生き方』に誇りをもって、S夫妻は今日もお互いと娘に愛を注ぎ合うのでした。

 

 それでは、また。

一繋ぎ再挑戦

 毎度のことながら冷凍した動物を解凍する時間の計算に苦慮しています。特に冬場は寒いため、2日常温で水に漬けていてもまだ筋肉がカチカチで予定通りに作業できないこともしばしば。

 

 さて、前回は海外の食肉解体法を参考にイタチの解体をしてみましたが、対象が小さいうえに吊るさずに解体したため、やりづらかったというお話をしましたね。

 それを踏まえて、今度はタヌキを吊るしてやってみました。

 やりたい人がいるかどうかわかりませんが、一応大まかな手順も説明していきましょう。

 

注:赤い画像が続きます。

 ネットにこのような画像をあげることの是非は人それぞれ判断も異なり、「あげるべきではない」という意見も正しいと思ってはいます。

 私はこれまでの活動を通して、実際の遺体を見て触らなければ知り得ないこともたくさんあると学びました。そうした自分の学びや経験を共有することにより、これからこの道に踏み入りたいと考える方にとって、参考となる情報源の一つとして役立てられるよう、敢えて新しい方法を試す時は作業工程を掲載することにしていますので、ご理解いいただきたいと思います。

 

 

 相変わらず前置きが長くなりましたが、ここからタヌキのお話に入ります。

 

 

タヌキ(♀)

 

 袋に穴が開いていたのでびしょびしょ。

 そして長めに解凍していたのに暖冬のおかげで解凍が進みすぎてしまいました。ちょっとあめかまりがします。

 

①吊るします。

 

 食肉の場合、四肢の先と尾は切り落とすので手首・足首から皮を剥きますが、骨を取るなら足先と尾も剥皮が必要です。吊るしていると剥きづらいので、まずは平らな場所で四肢の先と尾だけ剥いておきました。

 写真には写ってませんが、吊り下げ用のハンガーはスチールラックの脚にS字フックを固定したものを使用しています。

 アキレス腱と脛骨の間に切り込みを入れて、そこにS字フックをひっかけます。

 尾椎を切り離し、肛門周囲に丸く、後肢から腹部にかけて、前肢から胸部にかけて、腹部から下顎にかけてそれぞれ切り込みを入れます。 

 そして下半身から上半身に向けて皮を剥いていきます。

 足先の剥皮、吊るして全身を剥き終わるまで30分程でした。

 

②除肉(脱骨)にとりかかります

 

 写真では既にいくらか肉を切っていますが、皮を剥いたら直腸・膀胱をくりぬいて、肋軟骨を切って胸郭を開き、横隔膜を切り取って舌まで一繋ぎで内臓を取り除きます。

 内臓の損傷が激しく、ここで多量の血液が腹腔・胸腔から溢れてきました。

 続いて、胸骨に沿って胸筋を切り、左側の肋骨に沿って刃を滑らせながら広背筋の辺りを削いでいきます。脊椎まで刃が入ったら脊椎に沿って頸~腰最長筋(肩ロース~テンダーロイン)を削いでいきます。

 腰までいったら内側にある腸腰筋(内ロース)を中心から外側に向けて削いで、腸腰筋は最長筋と繋がった状態を保ちます。

 そして、骨盤に沿って刃を入れながら股関節を切り離したら、反対側も同様に削いでいきます。そこまで進めると写真の状態になります。

 肋骨から肉を削ぐ時、右利きなので左側はやりやすいですが、右側は左手で肉を右に引っ張り、右手で刃を左向きに入れなければならないのでやりづらいです。

 

③脊椎を外します

 

 骨盤を手前に引きながら脊椎に沿って刃を入れていくと最長筋・背筋が削ぎ取られていきます。

 

④胸椎あたり

  

 胸椎の棘突起にも刃を入れていくときれいに外していけます。

 このあたりの作業はサクサク進むので気持ちいいです。

 食用だと頭は最初に切り取られていますが、こちらではこの時点で脊椎と繋げて頭も外しました。

 

⑤脊椎が外れました

 

 まだ四肢の骨は残っています。

 左後肢から脇腹にかけて肉が赤黒くなっているところが受傷部位です。

 次は四肢の骨を外していきます。

 まずは前肢。手首周りの腱を切り骨に沿って筋肉を外していきますが、肩甲骨付近は筋肉が複雑に付いているので手間取りました。

 後肢は大腿骨頭(股関節側)から骨に沿って肉を開きながら徐々に膝関節、脛骨、足関節に向かっていきます。ここでアキレス腱だけは残しておきましょう。切ってしまうとフックから外れてしまいますからね。

 反対側の後肢の骨も外したら、全身の肉を掴んで支えながら左右のアキレス腱を切って終了です。

 

⑥脱骨の済んだ肉(内側)

 

 右が頭側で、左が尾側です。

 食用として考えると、この状態から必要に応じて切り分けるのは楽そうですね。

 

⑦除肉の済んだ骨

 

 まあまあきれいに取れましたね。

 ここからはいつも通り、肋間筋や頭の肉を取り、さらにパーツ分けしていきます。

 

⑧作業終了

 

 残った肉を除去して、パーツ分けして排水口ネットやだしパックにまとめました。

 左下が除肉した肉片ですが、最終的に手のひらサイズの肉が取れました。 

 作業開始からここまでで3時間弱でした。

 

総括

①剥皮は早い。皮が自重で引っ張られるので、とてもやりやすいです。事前に足先・尾の剥皮が必要なので、ここにどれくらい時間がかかるかは経験によります。

②除肉の作業もスムーズでしたが、これは筋肉と骨の形・位置関係を理解していたからです。ここも解体に慣れているかどうかによると思います。

③今回のように内臓を損傷している場合、腹腔・胸腔内に血液や消化管内容物が溜まっていることが考えられます。解体中にこれらの液体がこぼれると、跳ねて自分や作業環境を汚染する可能性があるため、対策をたてておかなければなりません。

④肩甲骨周りに手間取りましたが、一繋ぎで取ることにこだわらなければもっと早く済ませられました。

⑤最後に切り取った肉片の多くは頭と四肢の先、肋間筋で、四肢・体幹の部分は通常の方法と同程度の効率でした。

⑥全体的に、私程度でも解体経験がある人であれば効率良く作業でき、骨を損傷させるリスクも低く済ませることができると思います。作業時間も短く、やはり吊るして作業できるメリットは大きいです。

⑦注意点としては、吊るして作業するということは、遺体(感染源)が視点の高さになるということで、作業者は顔の保護が必要になります。そして、揺れるので刃物でケガをしないよう注意しなければなりません。

⑧今回の個体は内臓と筋肉を損傷していましたが、骨折が肋骨1本だけだったので容易に作業することができました。しかし、ロードキル個体は遺体の状態が千差万別であり、損傷が激しいほど作業しづらくなるのは明白です。遺体の状態に応じた作業方法の修正に対応できる技術も必要かもしれません。

 

 という訳で、この方法は経験者であれば問題なく効果的に除肉することができるとわかりましたが、遺体の状態によっては不利になる可能性も秘めています。

 ここまでやっといてなんですが、吊るせる環境の確保が一番の課題ですね。

 

 それでは、また。

こいつ、また変なことをやり始めやがった

 宿直が嫌すぎる。

 日勤が終わってから宿直室にこもって朝まで相談・受診対応にあたるので、いつ、どんな人から、どんな案件が来るかわからないまま一人きりで一晩過ごすストレスを抱え、確実に寿命を縮めてる実感があります。

 地域で暮らす患者・家族の生活を支えるうえで重要な役割であることは重々承知してるんですがね。それでも、精神と身体は蝕まれていくので、勤務終了後は適度にストレス解消を図る必要があります。

 

 というわけで、今回はイタチを解体しました(注:この先は赤い写真が載っています)。

 妻が職場の人に私の趣味の話をしていて、その方が拾って送ってくれたのです。ありがとう、妻と職場の人!

 

 寝不足の状態で遺体や刃物を扱う作業は危険です。今回の宿直では夜間電話が鳴らなかったので、ちゃんと寝られましたよ。

 

イタチの成体(♂)

 

 小さい動物は轢かれると踏み潰されることが多いので、原形を留めている遺体は貴重です。やっぱり可愛い。

 

皮を剥きました

 

 頭は完全に潰れており左後肢も複雑骨折していましたが、その他はほぼ無傷でした。ロードキルのイタチにしては状態良い方ですね。

 そして、ここからいつもなら内臓を取り出して各部位に切り分けて肉を取り除いていくのですが、ちょっとやってみたいことがあったので挑戦してみました。

 

肉を剥ぎました

 

 ご覧の通り、首から四肢までお肉が全て繋がっていますね。これがやりたかったんです。

 

 食肉解体の動画を観ながら参考になりそうな技法を探していた中で、インドネシアではヤギやヒツジを解体するとき、剥皮後に全身の肉を繋げたまま骨を取り外していることが分かりました。また、欧州でもウサギを同様に処理しているようです。

 もちろん、食肉用では肉が欲しいし、標本用では骨が欲しいので解体の目的が逆です。では、なぜやってみたのか?

 「人がやってるのを見たらやってみたくなるもんでしょ」

 

 動物も好きですが、食べることも好きなので、国や地域による食文化の違いが解体の方法にも反映されていることに面白みを感じる人間なのです。

 あと、通常の方式では国や地域を問わず脊椎と胸骨、恥骨は躊躇なく両断されてしまいますが、インドネシア方式では骨を一切傷つけずに除肉できます。骨と肉の両取りができる優しい方法。

 

 時間も資源も有限ですから、単純に標本を作るために解体するだけでなく、この機会に体験・学習できることは何でも挑戦してみるべきだと思います。

 見るだけより、実際に体験する方が理解も深くなるでしょう。標本を作ることと平行して他分野の多様な知識も身に付けていけると、世界を見る視野が広がるんじゃないでしょうか。

 

 インドネシア方式で除肉してみてわかったこと。

①本来は吊るしてやるので重力を利用して解体できますが、今回私は平置きの状態でやったので、むしろやりづらかったです。

②作一枚目の写真から三枚目の状態まで、およそ2時間だったので、作業時間は通常の方法と大差ありません。吊るしてればもっと早くなりそうです。

③繋げた状態でもきれいに除肉はできました。最終的に頭や肋骨間、骨盤内側は別途除肉する必要があります。

④標本向けのメリットは特に感じません。強いて言うなら、細かい肉片がほとんど出ないので肉の廃棄、作業後の掃除が容易です。その点では衛生管理面でメリットと言えなくもない?肉も骨もキレイに取れるので、狩猟個体を食用に解体しつつ、標本用に骨も取りたいという方には需要があるのかも?

 

 次回はタヌキを吊るしてやってみて、イタチ平置きとの作業効率の比較をしたいと思います。

 

 それでは、また。