スカベンジャーの標本部屋

本業は看護師ですが、趣味で動物骨格標本を作成しています。

春ですね

 すっかり春めいてきたかと思いきや、あっという間に過ぎ去りかねない気温が続きますね。

 毎年桜の開花に合わせてアミガサタケ採りに出掛けていますが、油断して開花時期を見逃しそうになってしまいました。盛岡はそろそろシーズンも終わりです。

 実家では今年も父親の育てているタラの芽やギョウジャニンニクが豊作でした。

 今ではほとんどの食材が通年入手できるようになっていますが、季節ものの山菜はその時期にしか出回らないので食べられるうちに食べておかないと来年まで食べられませんからね。

 

 さて、今回は久々に大きめの中型動物です。ストッカーが手狭になってきたので余裕を持たせるために一番スペースをとっているキツネを処理していくことにしました。

 前日から鍋に水を張って袋ごと投入して解凍しておきます。

 

成体のオス

 

 見た目きれいでも触ると頭が割れていて骨盤もグニャグニャです。発見時、道路に多量の吐血が見られ、解凍後もペットシーツが真っ赤になるほど口から血が流れ出ていました。

 解凍が甘く、左前肢付近がまだ凍っていて動きませんが、時間もないのでそのまま開始します。

 

 今回初使用のアイテムがこちら↓

O社のやつ

 

 噂によると皮に切れ目を入れるのにちょうど良く、角も樹脂で保護されているため腹膜を切る心配もないとのこと。

 ナイフで下顎に切れ目を入れたら、そこからO社のやつを挿し込み腹部まで切って行きます。サクッと切れます。メスやデザインナイフより早いし、確かに皮だけが切れるので内臓も出てきませんでした。ただ、毛を噛みやすいので「口から肛門まで一気に」とはいかず、何度か毛を除去する必要があります。

 四肢もやってみると、腹部より毛が短く皮と肉の隙間がある分よりスムーズに切れました。いいですね、これ。

 

剥き終わり

 

 脚が長いですね。

 頭骨、頸椎、胸椎、肋骨、骨盤、肩甲骨に骨折がありました。

ここから見ると平気そうですが…

頭頂部から後頭部にかけて砕けて脳がこぼれています

 

 気管の真ん中が裂けており、刃を入れてみると大量の血が出てきました。心臓・肺が損傷していたのでしょう。

 腹部の臓器は損傷ほぼ無しだったので腸内容物による汚染がなくて良かったです。

 

前肢と鎖骨

 

 鎖骨の場所は分かるのに、他の動物より筋肉が厚いのか探すのに手間取りました。

 骨はグダグダでしたが皮はほぼ無傷。なのに尾を剥く時にちょっと失敗しちゃいました…

 

 

 キツネは黄色いイメージがありますが、この個体は黒が多めでした。

 ペットシーツの血溜まりを見れば気管、胸腔からの出血量が窺えますね。

 

 皮は塩刷り込んで丸めて冷凍。骨はパーツ分けして排水口ネットに入れてバケツへ。まだ寒いので水浸けすると死蝋ができるのであえて水は張らず、まずは虫に任せることにしました。そこそこ肉が食われた頃合いに気温も上がるでしょうから、そこから水に浸けていく予定です。

 

 キツネを処理したのでストッカーも空くかと思いきや、解凍中にタヌキとネコを拾ってしまいまして、結局ストッカーはキツネ分以上の質量を受け入れる羽目になりましたとさ。

 それでは、また。

 

 

おまけ

 タヌキロードキル現場

 路上に横たわりヘッドライトに照らされた背中が哀愁を誘います。

 

自主練習

 職場の先輩が「毛皮鞣しに興味があったけど難しそうで諦めた(あと妻の猛反対が…)」と言うので、『狩猟者のためのハンドクラフト教書』と『牛の博物館』の標本作り自主練習をご紹介しつつ、状態が良い遺体を拾ったら一緒に解体しましょうと誘っていました。

 

 そして先日、夜勤の帰りにきれいなテンを発見。

 

 早速お互いの勤務を確認し、日程を調整して実家で解体作業をすることに。

 

 先輩はジビエが好きで鳥類を食用に解体した経験はあるものの、哺乳類の解体は初めてとのことでした。

 

解凍したテン(♀)

 

 説明に夢中で作業中の写真は撮り損ねました。

 片側を剥いて見せて反対側を実際に剥いてもらいましたが、さすがに鳥類で慣れているため遺体を扱うことには躊躇いがありません。ただ、鳥類との違い、食用との違いに戸惑っていました。

 難しさはあるものの、終始感嘆の声をあげて楽しんでいて、鎖骨を見せたり胃内容物を見せたり、ロードキルの現状を説明したりして遺体を収集し骨にして残すことの意義と楽しみを知ってもらえたようです。

 

 骨折箇所は肩甲骨と肋骨にヒビが入っているだけ。胃と心臓・肺の破裂による出血性ショックが死因のようです。胃の中身は主にカボチャと乾いた米だったので民家の残飯を漁ってたのでしょうか?

 テンのように体高の低い動物は轢かれる時に踏み潰されることが多いので、潰れていない場合は車のどこにぶつかっているのかいつも不思議に思っています。

 

 お子さんの用事もあり昼前には帰るため、剝皮後は部位毎に切り分けたところで終了。皮はこちらで保存し、後日また一緒に鞣します。

 とりあえず沼にハマまらせることはできたようなので、今までボッチでやっていたことを一緒にできる人が増えてくれるのは素直に嬉しいですね。

 

 こうした活動について私のような素人が別の素人に教えることの問題も懸念されるので、積極的に勧めるようなことではないとも考えています。

 ただ、「興味があるけどやり方がわからない」という人が見よう見まねで危なげに始めるよりは、経験者としてある程度の教示をすることも必要だと思います。私自身もまだまだ知識・技術不足ですし、手法も多様であることを知ってもらうためにも先述したように文献や研究機関による活動などを紹介していました。

 相手ができないこと・自分一人では教えきれないことをどのように補うかまで考えて、ようやく『人に教える責任を負える』と考えています。

 

 最後が堅苦しくなってしまいましたが、無責任にただ楽しむためにやっているわけではないことをご理解いただきたかったので付け加えておきました。

 

 それでは、また。

 

*おまけ

実家の駐車場の隅に落ちてたネズミの残骸。おそらく近所の外猫にやられたのでしょう。アカネズミかな?

食レポ

 お久しぶりです。

 昨年末から自身や家族の健康問題、職場でのパンデミックなどが目白押しで公私ともにずっとワチャワチャしていました。

 感染も一旦落ち着いたものの今度は別の病棟で発生したりと未だコロナ&インフルの脅威は去っていないと身を持って感じている今日この頃。

 一応、そんな中でも相変わらず動物を拾ったり貰ったり、新しい冷凍庫を買ったりと趣味の時間とお金は絞り出しておりました。家族も今は元気です。

 

 さて、今回は初めての味覚に出会ったのでご紹介したいと思います。

 

 それがこちら↓

何かの卵です

 

 

 お値段200円。滝沢市の台所『土日ジャンボ市』で購入しました。

 ピンポン玉くらいの大きさで、プヨプヨしていますが爬虫類のような『薄い殻』よりも『厚い膜』という触感です。弾力は弱く、表面はしっとりしていますがベタつきやヌルつきはありません。

 さて何でしょう?

 

 

 正解はサメの卵です。

 沿岸部出身の同僚達に聞いてみましたが誰も見たことも聞いたこともないとのことで、食用としての認知度は低いようです。

 私も今回初めて目にしました。お値段もお手頃ですし、未知の味を確かめずにはいられないライオスの如き食への探求心が「もちろん買うよな!?」と囁きます。

 横目で妻を見ると「買っていいんだよ。私は食べないけど」と先手を打ってきました。想定内の反応です。

 

 お店のマダムに食べ方を聞いてみると、鶏卵と混ぜて卵焼きにするそうです。

 ネットでも調べてみたところ、食用として流通しているのは主にアブラツノザメの卵だそうで、食べ方もマダムから教わった方法がメジャーなようです。ただ、ネットでもヒットする情報は極僅かで、全国的にもマイナーな食材だとわかります。

 

 では助言に従って卵焼きを作ろうか?しかし、それで本当のサメ卵のポテンシャルを確認できるのか?でもどんな調理法が思い付く?

 色々考えた結果、卵焼きと茹で卵でいただくことにしました。

 

 ちなみに匂いを嗅いでみると僅かに魚臭を感じる程度で特に気になる匂いはありません。

 まずは卵に包丁を刺して中身をボウルに絞り出します。

 中身は若干黄色がかった白で、ゆるゆるのカスタードクリームのようです。

 せっかくなので生を一舐め。ヌメりはなく、少しザラつきを感じます。味も匂いも何もないので、ただ『舌触りの悪い何か』が口内に存在するという感覚です。

 外側の魚臭さも中身には感じられなかったので匂いは卵より母体由来のものだったのでしょう。

 

 とりあえずサメ卵4つに鶏卵1つと白だしを少々混ぜて卵焼きを作ります。

 鶏卵とはよく混ざるんですが、フライパンに広がりにくく滑りも悪いです。焼くと固まってくるものの、巻くために返そうとするとモタっとしていて返しにくい。

 

サメの卵焼き

 

 鶏卵だけより白みがかっています。

 箸を入れると固さがあり、食感はボソボソしています。サメ卵らしい味も匂いもなく、鶏卵の味も薄まっているので見た目は卵焼きなのに全く別の何かです。何を食べているのか本当にわからなくなります。

 生クリームとか牛乳とかで滑らかさを足して、ハーブやスパイスで香りを付けてみたらワンチャンあるかもしれません。

 

 では茹で卵は?

こんなんなっちゃった

 

 お湯に入れた途端に膜が破れて中身が出てきましたが、流れ出て行くとこなくすぐに固まりました(左上のシワシワが縮んだ膜の成れの果て)。50秒程茹でて引き上げます。

 全部が白身。やっぱり味はなく、モサモサした食感で口内の水分が持ってかれます。固茹でしすぎた味のない卵の黄身を粉っぽくした感じでしょうか?

 醤油をたらしてみると醤油味。でも、めんつゆをかけてみたら幾分か美味しさを感じられたので、そのまま茹でるより煮付けにすればもっと美味しくできたかもしれません。

 

 食レポと言いつつ、初めて感じる味と食感で謎な例えでしか形容できませんでした。

 旨からず、さりとて不味からず。もう一度食べたいかと言われたら「もういいや…」となりそうですが、無味無臭のため課題である食感・舌触りさえクリアできれば活用法は広げられるかもしれません。

 

 それでは、また。

 

野生動物の生き死に

 秋田県で建物に侵入した親子熊3頭を殺処分したことに対して苦情が殺到しているらしいですね。

 『命を大切に』という考えは日本人なら幼少期から教え込まれてきたことであり、間違った考えではないでしょう。しかし、ヒトは独自の社会と生活環境を作り自然界とは一線を画した生き方をしているように見えても、自然と断絶して生きることのできない生き物であり、生命や生活、仲間を守るため野生動物の命を奪う場面があるのもやむを得ないことだと思います。

 有害駆除や外来生物駆除、ノネコ・ノイヌ駆除などに対して「殺される動物がかわいそう」という理由だけで批判する人は、その動物の一側面(主に外見と自分の都合)しか見ていないように感じます。

 

 今回は重いテーマではありますが、野生動物の生き死ににヒトがどう介入していくのか、私の考えを述べていきます。

 先日、数ヶ月ぶりに夜中のドライブをして最初に見つけたのはタヌキでした。

 

 白線上に横たわるタヌキを発見し、いつものように手袋とゴミ袋を用意して回収に向かったのですが、タヌキはまだ生きていたのです。

 

前肢で身体を起こそうとしても

へたりこんでしまう

ヒトに気付いても怯えた様子は見られませんでした

 

 意識はあるものの外敵の接近に対して逃走しようとする反応がなく、首もフラフラしていたので意識障害を起こしていたのでしょう。

 吐血はありませんが周囲にブドウの皮の塊があったので嘔吐していたことが分かります。

 後肢が変な方に曲がっており立ち上がることもできなかったので、少なくとも腰椎~骨盤は骨折しているでしょうし、嘔吐していたことや朦朧状態であったことから内臓か頭部を損傷していた可能性があります。

 見た目にも痛々しく「かわいそう」と感じられる状態です。普段死んだタヌキばかり扱っているので、稀ではありますがこの状態で発見すると毎回戸惑ってしまいます。

 

 ここで私がどんな対処を選択したかというと、『路上から退避させて放置』でした。

 路上から退避させたのは後続車の事故やタヌキを食べに来た動物の二次的な事故を防ぐためです。

 この状態のタヌキを放置することに対して批判的な考えを持たれる方もいると思いますが、それこそ先述した「一側面しか見ていない」考え方です。私のブログを読まれている方の中にはいないかとも思いますが。

 

 では、なぜ放置するのか?

 一般的にケガをした動物を助けることは美談とされる傾向がありますが、野生動物だっていずれは死ぬものですから、生きるか死ぬかは自然に任せるのが望ましいです。

 そしてここで議論になるのが、「交通事故によるケガはヒトの活動に伴って生じるものであり自然死とは異なる現象。ヒトが責任をもって救護すべきでは?」という考えです。

 これについては私も悩ましいとは思いますが、ヒトも自然に関わりながら生きる生物である以上、意図せず野生動物を傷つけてしまうことも自然界の出来事と捉えています。

 動物を傷つけることを目的として意図的にケガをさせる事案はそうそうないと思いますが、その場合は状況に応じて違った判断が求められるでしょう。

 そして、タヌキは狩猟対象であり、地域によってはヒトの生活に悪影響を及ぼすこともあるため、そうした人々にとっては生かすこと自体に意義がないと認識されていることも忘れてはなりません。

 

 すると今度は、「助けられないなら、せめて苦しまないよう安楽死させてあげたい」という意見が出てきます。

 安楽死なら死を回避できずとも苦痛から解放させることはできるので優しい選択ですね。しかし、どんな状況・状態であっても無許可で野生動物を捕獲・殺傷することは認められていません。

 自らの手で殺すことも獣医師の元へ連れていくこともできないならば、そのまま死ぬのを待つしかありません。そもそも野生動物は交通事故以外でもケガを負ったり病気になったりして長く苦しみながら死ぬ個体もゼロではないですから、交通事故の犠牲者だけ苦痛から解放してあげようというのはおかしいです。

 そして助からない状態に見えても自然治癒して山に戻っていく場合もあるので、転帰がどうなるかはその場で判断することはできません。回復してたかもしれない個体を安楽死させてしまったら取り返しがつきませんね。

 

 私もこのタヌキを助けたいという感情がないわけではありません。それでも、感情と切り離した判断が必要なことを知っているため、心を鬼にして放置する選択をしています。

 

 動物種によっては救護が必要な種もいますし、救護活動をしている方にも敬意をもっています。但し、それはその方々に専門的な知識と設備があり、望ましい野生動物との関わりを理解した上で矛盾を認識しつつも活動されているからです。

 自分の感情的な意見を正しいと信じて野生動物とヒトとの関係性を考慮せずに救護だけを求めるくせに、実行や費用負担を他者に委ねる所謂『動物愛誤』には敬意を持てません。

 死ぬものは死ぬ。生きるものは勝手に生きる。それが自然界です。少なくとも私を含め一般人が手出しして良い領域ではないというのが私の考えです。

 

 私もかつて無知だった頃にはケガをしたタヌキを拾って動物病院に連れていこうとしたことがあるので、反省すべき点はあります(「死んだら骨に…」という目的はありましたが)。結局その個体は搬送中に亡くなり標本ケースに収まりました。

 あと、野生動物を動物病院や動物園に運び込むことは他の患畜や飼育動物への感染リスクもありますし、対応にかかる手間や費用の負担など施設に迷惑をかけることになります。あのとき連れていけなくて良かった。

 ですが、その経験があったからこそ野生動物の救護に関する情報を意識して集めるようになり、今の考え方に至った経緯もあるので、救護推奨派の方も知識を得て考えが改まってくれることに期待したいです。

 

 ケガをした野生動物の取り扱いについては『傷病野生鳥獣』で検索すると各自治体のホームページで説明されています。

 いずれも要約すると「野生動物に余計なことしないでください」って内容です。

 救護対象は限定的で、ほとんどは特別天然記念物絶滅危惧種で、治療によって自然に還せる可能性がある状態であることが条件のようです(他にも判断基準はありますが)。

 もしケガをした動物を発見して対処に困ったら発見地の自治体に問い合わせてみましょう。

 

 尚、翌日現場を見に行きましたがタヌキの姿はありませんでした。自力で移動することはできないので、死んで回収されたか生きて回収されたか…、行く末を知る術はありません。

 

 それでは、また。

 

 

岩手の夏は短い

 2ヶ月前に解体したヤギはデカ鍋で水浸けし、約1週間おきに水換えをしながら様子を見ておりました。

 

肉はもうありません

頭も良い感じ

 

 若いので数ヶ所バラけています。

 普段ならあと1ヶ月は置きますが、連日の猛暑で高温が保たれたおかげで腐敗も順調に進みましたので、一旦引き上げて乾燥してみることにします。若いし脂肪の少ない個体だったので骨に残った脂肪もほとんど抜けたとは思いますが、乾燥してみて脂が浮いてくるようなら洗剤水に浸けて脱脂を追加する予定です。

 

 そして用の済んだデカ鍋には別個に腐らせていた中型哺乳類達の骨をまとめて水浸けする役目を与えます。

 この骨達は木陰に置いてたため、あまり水温が上がらずヤギより腐敗が進んでいませんでした(昨年からのものもあります)。肉はもう無いですが、骨髄や脂肪はまだ残っていそうなので、鍋に入れて日当たりの良い所で水温を上げて今夏中に仕上げてしまいたいです。

そっと置かれた怪しい鍋

 

 骨しかないので動物に荒らされることはないでしょうが、一応鎖で封印しております。

 タヌキ3、アナグマ1、ハクビシン1、ウサギ1が収まった見た目も中身も特級呪物の如し。

 

*おまけ

 アオダイショウはこの暑さでも食欲旺盛です。 

餌はアダルトラットMサイズ

皮が伸びて鱗が広がるところが好き

ナマケモノ(一応)完成

 暑い日が続いたおかげでナマケモノの脂も良い具合に抜けたようです。

 

 

全体

 手根骨や指は出していません。

 やはり肋骨は数や二段式になっていることなど奇妙ですね。

 椎骨に対して四肢の骨が長く頑丈な印象です。

 

左肋骨

 前の方は肋骨の関節(?)が癒合しており、10番目から分離しています。他の動物だと肋軟骨にあたる箇所だと思うのですが、肋骨本体と分離した肋骨とは軟骨で繋がっていて胸骨まで直接伸びていました。

 これについては情報不足で理由はわかりません。

 

骨盤

 仙骨の形も奇妙ですが、他の動物と同様に仙椎が複数繋がって形成されているのがわかります。仙骨は腸骨と仙腸関節(赤枠)でつながってるのに、さらにその先で座骨(青枠)ともつながっています。

 この個体はメスですが、仙腸関節も恥骨結合も完全に癒合しており出産の際に広がらないので大きな子は産みづらそうです。

尾椎

 存在感がほとんどなく、作りも雑です。

 

左前肢

 肘関節の嵌まり方は浅く、上腕骨と橈骨の遠位端が広がった形状も不思議です。

 

左後肢

 大腿骨頭は若干前向きで周囲の凹凸も少ないです。

 脛骨と腓骨の間が開いています。ここには筋肉が詰まっていたわけではなく丈夫な膜が張られていました。

 

 肘や膝の関節を見てみると、陸上の四足動物に比べて関節の作りが甘いように見えます。他の四足動物は上からかかる自重を下で支える構造なのに対し、ナマケモノは懸垂した状態で自重を支えるための構造になっているのでしょう。

 

頭骨

 歯並びだけ見るとトドのよう。犬歯だと思ってたのは臼歯らしいです、知りませんでした。ってことは、ナマケモノには臼歯しかないんですね。

 この臼歯は上下が擦れ合うことで鋭利さを保っているようです。イノシシやアナグマの犬歯と同じ。

 さらに歯槽骨には上下の歯が収まる窪みがあります。顎を動かすと歯がきれいに収まって気持ちいいです。

 

頭骨の内部

 ファイバースコープで中を覗いてみました。カメラの形状の都合でこの角度でしか撮れませんが、内部もシンプルな構造で外部と繋がる孔が少ないです。

比較用にイヌの頭骨内部

 

篩骨

 薄い膜でできた袋状の篩骨も珍しいです。

イヌの篩骨


あと指

 真ん中に何かあります。一般的には左端から順に中手骨⇒基節骨⇒中節骨⇒末節骨となるはずですが、これは基節骨なのか?

 おそらく屈筋の腱を支持するための機能をもつのかと思われます。写真を撮っていませんが指骨の掌側にも明瞭な溝がありましたので、『指を曲げる』『曲げた状態を維持する』ことに力を注いでいるのでしょうね。

 指骨の関節面は肘や膝に比べて明確で、気持ちいいくらいピッタリ嵌ります。

 

 色々感想はありましたが、まとまらなかったので『生物の身体って面白いですね』と締めておきます。 

連休の大物

 今年の夏は暑いですね。

 岩手も連日真夏日で雨が全然降らず、農作物の生育が心配です。

 肉を腐らせるには良い条件なんですがね…

 

 そんな中、届いたのが巨大な冷凍便。夜勤明けで寝ている間に妻が受けとってくれましたが、重くて運べなかったため玄関に置かれていました。

 

 いつものことながら敢えて中身は問わない察しの良い妻。いそいそと開封する夫。

 まだ凍っているのに爬虫類特有の香りの中に若干の腐敗臭が…

 大きい分匂いも強く、一晩風呂場で解凍してみると風呂場に香りが充満してしまいました。

 

 作業台に載せてみましたが、いつものペットシーツでは役に立たないので今回はビニールシートを敷いています。

 屋外でも香りが強烈です。

 

ミズオオトカゲ

 体重12.9kg、体長91cm、尾長121cm

 デカイ!重い!長い!

頭だけでも私の手より大きいんです。

 

腹。

下顎は細かい鱗。

胸辺りの鱗は六角形。

お腹に向けて将棋の駒みたいな五角形になり、中心はジッパーのように左右が噛み合う形になっています。

 

所々爪がなかったり。

長い指と爪もカッコいい。

 

 全身触りまくってみましたが、筋肉が感じられないくらいプヨプヨで、お腹もぺったんこでした。

 前回のヤギと同様、何かしらの病気で衰弱していたのかと思いましたが、違いました。

 正中から切り開いていくと、筋肉が腐敗して溶けかけており、内臓も消化管以外は形をかろうじて保っている程度で、緑やら紫やらカラフルになっておりました。

 さすがにこの写真は載せられません。

 

長いと噂の舌骨。

 

 この日は剥皮しきることができず、内臓を除去した後、尾の付け根の骨を外して尾を残した状態で塩漬けしておきました。

 

~二日目~

 残りの尾の皮を剥いていきましたが、背部の骨と皮の境目が不明瞭なので尾の剥皮だけでも2時間かかってしまいました。

 とりあえず皮には肉が沢山残っていましたが、塩漬けして冷凍しました。

 

 肉の腐敗も進行中で、ハエがまとわりついて邪魔なうえに、作業場に選んだ日陰がクマバチの巣の近くだったので、クマバチに邪魔者扱いされながらの作業となりました。

 この日は頭、四肢までバラしたところで時間切れ。除肉までは出来ず…

 元から肉は水浸けで腐らせる予定でしたが、手根骨や頭骨がバラバラになるのは避けたかったので、腐敗が進まないよう乾燥させておきます。

 

~三日目~

 除肉の続きをしつつ、さらに細かくパーツ分けしていきます。

 肩甲骨、肋骨、骨盤を外し、尾を6分割し、左の前後肢を1本ずつバラして出汁パックや排水口ネットに入れておきましょう。

左前肢手根骨(橈骨・尺骨側)

左前肢手根骨(指骨側)

 

 手根骨、足根骨は位置関係がわかるように記録しつつ、組む際の参考にするため右前後肢をバラさず乾燥させておきました。

 

 あとはいつも通り自然の力に任せます。

 結局ここまで三日かかってしまいましたが、たまたま四連休だったので助かりました。

 連日猛暑の中、屋外で防護具を装着して作業するのは疲れますね。こまめに休憩、水分補給をしつつ進めましたが、色んな疲労が蓄積してしまい、連休最終日は寝たきりでした。

 

 それでは、また。