標本作りをされている方はそれぞれお気に入りのアイテムをお持ちだと思います。
でも初めて標本作りをする時はどんな道具を揃えたらいいのかわからなくて困りますよね。
それに経験を積んでも、他の人はどんな道具を使っているのか気になります。
というわけで、今回は私が解剖や標本作りに使用している主な道具をご紹介します。参考程度にご覧ください。
①カミソリ
美容用品のコーナーにあります。
他の方のブログなどを見ているとメスの代わりにカッターやデザインナイフを使われている方が多いようですが、私はカミソリ派。
利点としては、7本入りで百円とコスパが良く、使い捨てできるので衛生的。それでいてカッターよりも切れ味が良いところ。
欠点は、柄が細くグリップがないので長く使っていると滑りやすくなること。刃先が丸いので先端を使った繊細な作業には不向きなこと。その点ではカッターやデザインナイフの方が都合が良さそうですね。
安全に解剖するためには切れ味の良さは大事な要素でもあるので、どんな刃物を選ぶかは結構重要です。
②リッピングハサミ
手芸コーナーにあります。
どこの百均でも売っていますが微妙に形やサイズが違っており、私はダイソー(写真左)の品が指に合うのでよく使いますが、セリア(写真右)の方が刃の形や切れ味が好みです。
刃の厚さも違いますね。
小さくて先端も鋭利なので、小型動物の解剖に適しています。また中型動物でも頭部など複雑な部位の細かい除肉や趾先の剥皮にも使えます。
欠点は、柄が小さいため長時間使用していると指に食い込んで痛くなってくること。元々糸を切るだけの道具なので長時間使用を想定していない作りですからね。
同じようなサイズでは鼻毛切りや美容用のハサミもありますが、鼻毛切りは先端が丸くて細かい作業に向かないことや、美容用は刃がカーブしているので刃に隙間ができて切りづらいといった難点があるので嫌いです。
ちなみに以前はダイソーの美容ハサミがお気に入りでした。刃先が鋭く、刃がストレートで切れ味も良く、指にフィットするサイズで、オールステンレスで錆びにくい。全てにおいて現行品に勝る品でしたが、いつの間にか廃盤となって入手不可能になりました。下の写真は私が持つ唯一の在庫です。
③折り畳み式フルーツナイフ
私は大型動物の解体に使います。フルーツナイフといえども鹿1頭くらい解体するには十分な切れ味があります。折り畳みの利点は持ち歩きや保管がしやすいことだけ。別に折り畳み式である必要性はそれほどありません。
中型動物でも、時間の都合で最短時間で大まかな除肉まで済ませたいならカミソリよりもこれを使った方が早いです。
折り畳みでなくとも、ナイフも百円だと買い換えも躊躇なくできるので衛生管理の面でもメリットがあると言えます。
欠点として、洗って使い回す場合には隙間があるため洗い残ししやすいことや長く使うと切れ味が落ちることが挙げられます。
④ピンセット
百均の衛生用品、工具のコーナーの他、プラモショップやホームセンターにもあります。
細かい作業で皮膚や肉を把持したり、小さな穴や隙間の組織を取り出したり、小さな骨の組み立てに使ったりと用途が広いので形やサイズも各種あるといいですね。
逆作用タイプ(写真右)は通常のタイプと違い、掴むと開き、手を離すと閉まるので把持した状態を維持したいときに便利です。
関係ないけど大きいものはミミズ捕りに最適です。
ただし、百均の物は先端の作りが甘いので、精密な作業に使用するものは高くてもプラモショップで買った方が良いと思います。
⑤コッヘル(鉗子)
百均にはありません。医療器具ですが同じ物が釣具屋では針外しとして売られています。
ピンセットより強い力で掴むことができ、写真のようなストッパーがあるため手を離しても把持した状態を維持することができます。
用途もピンセットに準じますが、滑りやすい組織の扱いや力を入れて引っ張る時、煮沸・薬品による除肉の際でも安全に取り扱えるメリットがあります。
⑥麦粒鉗子(ばくりゅうかんし)
聞き慣れない道具でしょうが、主に耳鼻科で使用される医療器具です。もちろんお店では買えませんし、数万円します。たまにヤ◯オクで安く売ってます。
皆さんは頭部の除肉の際に頭蓋内の奥にある脳が取れなくて歯痒い思いをしたことありませんか?
大後頭孔からピンセットやコッヘルは入るけど、大後頭孔が邪魔で開けないからちょっとしか掴めなくてイライラするんですよね。
そんな時にはこれ。
ハサミのように柄を広げると先端の部分だけが開くので、大後頭孔に邪魔されずに奥の組織を掴んで除去することができます。また鼻腔の篩骨を壊すことなく軟組織や入り込んだウジ、ミルワームも除去できます。
私は先端がストレートのタイプと角度のあるタイプを買いましたが、先端に溝がないものやハサミ状になっているものもあるので、自身の作業目的に合ったタイプを選ぶことができます。
ただし、耳鼻科用なので長さは15㎝程までしかなく、大きな頭骨では奥まで届かないこともあります。内視鏡手術用に似た形の道具があり、こちらはもっと長さがあります。値段も高いので購入はしていません。
⑦ステンレスバット
調理器具のコーナーにありますし、業務用品を扱うお店などでは大型のものも扱っています。
解剖道具を並べておいたり、切除した組織や寄生虫を観察したり、食用にとっておく肉を分けたりするのに使います。動物のサイズに合うものを使えばこの上で解剖もできます。
道具を置くだけならバットでなくても、発泡スチロールトレイでも問題ありません。
⑧ペットシーツ/介護シート
ペットシーツはペット用品。介護シートは介護用品のコーナーにあります。
名前や用途は違いますが物は一緒です。消耗品で使用量は多くなるため、ホームセンターやドラッグストアで沢山入ったものを買った方が良いでしょう。
吸水ポリマーが液体を素早く吸収し、尚且つ逆流もしないので、回収した遺体を袋に入れる際に中に敷いておくと体液が漏れるのを防いでくれますし、これを敷いて解剖すると床が血液で汚染されません。
あと、これで包んで冷凍すると解凍時に出るドリップを吸ってくれるし、骨の乾燥もこれで包むと早く済みます。考え方次第で用途はもっと見つかるかもしれませんね。
サイズも様々ありますので、対象動物に合わせられるよういくつか用意しています。
⑨シリマー
要は注射器と注射針です。たぶんメーカーや商品によって名前は違います。化粧品のコーナーにあり、本来は化粧品を容器に移すのに使うようです。
除肉の際に鼻腔や細かい隙間に残った組織を水圧で押し流したり、逆に吸い出したりする時に使います。また、脱脂の際にはドリルで骨に孔を開け、これを使って脂肪を水圧で流したり吸い出したり、あるいは溶剤を骨髄に注入したりして効率を上げることもできます。
持ち歩いていて職質されたらあらぬ誤解を受ける可能性があるのでご注意ください。
⑩(野菜)収穫ネット
ホームセンターの農機具コーナーにあります。
サイズと色も豊富で量の割には意外と安く、10枚入りで400~600円位です。ポリエチレン製のため耐水性もあります。
遺体を野外に晒したり、埋めたり、池に沈めたりする際、細かい骨や歯の紛失を防ぐために頭部、四肢の先、尾などストッキングタイプの排水溝ネットで包みます。そのうえでこのネットにまとめて入れておくと回収が楽になります。
成体のキツネなら5kgサイズで十分入ります。
とりあえず以上。
尚、ピンセットやコッヘルなど使い回しする金属製の道具は、使用後に十分洗浄・消毒して、乾燥させたらオイルをさして錆び防止しておきましょう。
大抵のものは安価に揃えられそうですが、医療器具はあると便利だけど入手が難しく、お財布にも優しくないし、必須ではありません。
他にも便利な道具をご存知の方はコメントで教えてくれると嬉しいです。
それでは、また。