スカベンジャーの標本部屋

本業は看護師ですが、趣味で動物骨格標本を作成しています。

若タヌキ

 先日実家で姪がドアを開けていたらネコが脱走してしまいました。
 とりあえず親に伝えたアドバイスは以下の通り。
①近隣に声掛して情報提供を求める
②遠くには行かず昼間近くの物陰に隠れていて夜に家の周りに出てくるだろうから、玄関と裏口に餌を置いておく
③玄関の前室はネコが通れる幅を開けておく
④追いかけると逃げるので、見つけても放っておく
⑤前室に入ってきたらドアを閉めて捕獲する

 うちの子の性格を考えると『遠くには行かない(かも)』『飼い主からも逃げる』という点は予測されたので、以上のことを実行してもらったら4日後に予想通りに帰ってきました。もちろん必ずしも予想が当たるわけではなかったでしょうから、今回は運が良かっただけです。
 ネコが外に出ることはネコにとっても人間にとっても生態系にとっても不利益が大きいので、再発防止に努めなくてはなりません。

帰宅後、くつろぐネコ。ダニ付いてないだろうね?

 そして本題。今日のタヌキは体長43cmの若いメス。



ぱっと見はきれいそう。

 口腔内を撮り忘れましたが、まだ歯が生え揃っておらず犬歯もちっちゃいです。
 触った感じでは左大腿骨が完全に折れていて、下顎もカパカパしていました。他の損傷は開いてみないとわかりません。


左下顎の先端に割れ。

右下顎の関節近くも割れていました。
 頭蓋は無傷で左右の下顎が割れるって、どんな轢かれ方をしたんでしょうね?


左下肢。
 大腿骨が折れ、先端が腹腔に刺さっていました。ピンセット先に見えるのが露出した大腿骨。

 これ以外には頸椎、胸椎の棘突起と横突起に複数箇所骨折、肺の一部に出血、折れた大腿骨で大腸に穿孔がありました。
 死因は特定できませんが、頭部打撲、脊椎損傷、呼吸不全、出血性ショックなどが同時に生じていたので、これらのうちいずれかが原因と考えられます。

 あと、右大腿骨には謎の溝がありました。

 写真では見づらいですが、中央に溝があります。筋かと思って刃を入れたら意外と硬く、骨膜が肥厚し硬くなっているものだとわかりました。その内側に溝があり、溝の中は赤い組織が詰まっていました。そこで、左大腿骨と見比べてみましたが、やはりそちらには溝はありませんでした。
 謎

 これほど若い個体では普通に煮沸したり腐敗させたりするとバラけすぎて修復が難しくなるので、今回はポリデントをメインに処理していこうと思います。
 お湯と多量のポリデントと共に発泡スチロール箱に入れて一晩置いて様子を見ます。

*おまけ
ダニが多い個体でした。

 解体しつつ這い出たダニをつまみ上げて回収し、アルコールに浸ける苦行。ペットシーツからは出させぬ!
 作業後はアルコール消毒と殺虫剤散布をしました。新しいフリーザーと置場所が欲しい。