ロードキルとは、動物が自動車に轢かれて亡くなることを言い、被害に合うのは野生動物だけでなく、ネコやイヌなどの飼育動物も含まれます。
ロードキルで亡くなる不幸な動物を少しでも減らすためには、どのような条件下で事故が起こりやすいのかを知る必要があります。
というわけで、私が調査してわかったロードキルの好発条件をお伝えしていきますね。
1)環境要因
当然ですが、ロードキルは動物の活動範囲に自動車道が走っているために発生します。野生動物の生息数が多い場所を通る道路ほど危険度が高まりますが、その中でも特に発生しやすい条件があります。
①山沿い、山越えの国道・県道
→野生動物の生息数が多い環境で、かつ県境や街と街を結ぶ道路などでは、夜間も交通量がそれなりにあるため、動物と車の遭遇する機会が増えてしまいます。
盛岡市で言うと、宮古市へ向かう国道106号、遠野・大船渡へ向かう国道396号、秋田県へ向かう国道46号などがあります。
②緩やかな下り坂
→路上に動物を発見しても回避やブレーキが間に合わず接触してしまいます。
そのため、ロードキルが発生すると下り側の車線に遺体があることが多くなるので、遺体を避けようとして事故に遭うケースもあります。
③緩やかなカーブの先
→カーブの先が見通せないと路上の動物を発見しづらいですし、かつ曲がるためにハンドル操作している最中のため、回避ができず接触してしまいます。
下り坂とカーブのコンボ。この先にタヌキが居たら回避は不可能。
2)人的要因
人は誰しも動物を轢きたいと思っていません。それでもロードキルが発生するのには、運転者側にも一因があるのです。
①速度
→特に上述の道路条件+夜間という状況では、先行車がいない、歩行者がいない、警察の取り締まりがない、見通しが良い、などの理由から速度を出しやすくなります。運転者の多くは動物の飛び出しは考慮していないでしょう。
速度が速い程、動物を発見した時の回避反応は遅れるため事故を招きやすくなります。
安全運転を心掛けましょう。
②車種
→実際にロードキルの瞬間を目撃したことはありませんが、車の大きさや形状が関係していることも予想されます。
車が大きい程、衝突時の衝撃は大きく、死亡率は高まります。
また、車高が低い車ほど接触する範囲が広く、回避できる範囲が狭いため、接触する確率は高まります。
動物の大きさによっては、逆に車の方がダメージを受けることもありますね。
③注意・集中力
→夜間の運転は眠気との戦いです。意識を保っているつもりでも注意・集中力は低下しています。また、他の車が少なく、単調な道が続く道路では、スマホを見たり他のことに気を取られたりしやすくなります。
そうすると動物の存在を見落としたり、運転操作を誤ったりして事故ってしまいます。(私もそうでした)
眠気を感じたら無理せず車を停めて数十分でも仮眠をとりましょう。そして運転中は運転に集中しましょう。
3)生態の要因
①採餌行動
下の写真をご覧ください。
左から山林→道路→田畑という並びになっています。さらに田畑の先に川がある場合もあります。
田畑や川はモグラやネズミ、昆虫、どじょう、カエル、カニなど肉食・雑食動物の餌となる小動物が沢山生息しており、人が歩きやすいよう道も整っているため、夜間に山林のねぐらから出た動物は田畑を目指します。
そして餌を探しに行くとき、あるいは餌を食べてねぐらに帰るときに道路を横断し車にはねられるのです。
ロードキルの遺体を解剖した際に胃の内容物も確認しますが、多くは胃の中に餌が詰まった状態であり、餌を食べた後ねぐらに帰る際に轢かれる割合が高いことがわかります。
その理由として、往復時の行動パターンの違いによるものが考えられます。
動物は餌を探しに行く際、一直線に目的地に向かうのではなく、その道中でも地面を嗅ぎ回りながら餌を探していきます。なので、道路を横断する前にも道路脇をうろうろしているので運転者に見えやすく、回避できる可能性が高いと言えます。
反対に、餌を食べ終えてねぐらに戻る際は駆け足で移動するため、道路上に突然飛び出す形となり、運転者は回避が間に合わなくなるのではないかと考えます。
動物の活動開始、終了時間によって注意すべきポイントが異なるということですね。
②車の認識
車を運転していて路上に動物を見つけ、向こうもこっちを見ているのに、なかなか逃げないという経験はありませんか?
「車来てるのわかってるなら逃げろよ」
と思うかもしれませんが、車を『車』として認識しているのは人間だけです。動物に車の概念はありませんし、人間と同じ認知能力を持ち合わせていませんよ。
人間ならば道路を渡る際にライトに気付けば「車が来たな」と考えて、轢かれないよう行動できますが、動物に人間の歩行者と同じ反応(車をよける、通り過ぎるのを待つなど)を期待してはいけません。
車が接近しても路上でうろつくキジ。
路上で動物を見つけたら道を譲ってあげましょう。
③ヘッドライトへの反応
夜行性の動物は暗い中でも行動するために、わずかな光も増幅して感知できる眼球の構造をしているので、車のライトを浴びることは視界を奪われることに等しいのです。
このような状況に陥ると、動物は反射的に思考と行動が一瞬停止し、回避行動を取ることができなくなります。そのため、夜間道路上にいる動物は車が接近しても逃げられず轢かれてしまうのです。
以上。
野生動物の事故状況と人間の事故状況は共通点も多いので、ロードキルの予防を図ることは全ての事故予防にも役立つことだとも思います。
なお、動物種や年齢、季節によって行動パターンは異なりますし、好発条件以外の場でも当然ロードキルは発生しています。
どのような場所を走る時でも、常に路上の異変に気を配り、適切な対処行動がとれるよう安全運転していきましょう。
それでは、また。