猛暑日が続き、冷房を止められない今日この頃。今月の電気代が怖いですね。
今日はイヌ。しかも重度の歯周病持ちの個体です。
この子は真冬の溜め池で浮かんでいるのを発見しました。近くを通った地元民に確認したところ、近所で飼われていたイヌではないとのこと。首輪もしていなかったので、捨て犬がこの地にたどり着き、水を飲もうとして足を滑らせたのかもしれません。
胃内容は残飯と小動物の骨(ネズミ?)が少々。
上から
下から
左側面
右側面
上顎門歯と犬歯
上顎側面
上顎内側(左)
上顎内側(右)
下顎上面
下顎内側(右)
下顎内側(左)
当時はまだガラケーだったので、解剖時の口腔内の写真は消えてしまいました。
歯肉の腫れや部分的な黒色化、歯のグラつきがあったと記憶しています。
見て分かる通り、歯石がほぼ全ての歯に付着しています。標本作成の過程で多少剥がれたりしてしまいましたが、当初は数本の歯が歯石で繋がっている状態でした。
歯槽骨も融解しているため、歯根が収まるスペースがなく、歯は歯肉によってかろうじて支えられている状態でした。既に前臼歯のいくつかは脱落しています。
当時まだ未熟者だったこともあり、除肉が済んだ時点で脱落した歯を元に戻す自信がなかったので、脱脂する間もなく慌てて歯をボンドで固定したため、かなりの脂肪が残ってしまいました。(時間があればキレイにしてあげたいですが)
これほどの歯周病ですが、意外と虫歯は僅かでした。それでも歯肉の状態から相当の痛みは感じていたと思われます。
野生動物は歯磨きをしませんが、人のように虫歯や歯周病に罹ることはほとんどありません。
野生の生活、食事が自ずと歯周病の予防に繋がっているからです。しかし、ペットとして飼われている動物は自然本来とかけ離れた生活をするため、飼い主による意図的な介入がなければ歯周病を予防することが出来ません。
『動物を飼育するということは、動物の命に責任を持つこと』とよく言われますが、それは単に愛情をもって接する、終生飼育する。ということだけではないと思います。動物本来のあるべき生活から引き離された環境で生きることを余儀なくされた個体には、どのような影響が生じるのかを理解した上で、それを補うためのサポートをする義務があると私は考えます。
私も今まで飼ってきた動物にとって良き飼い主であったという自信はありませんが、このような症例に出会うたびに、人としてのあるべき姿勢について考えさせられます。
また説教くさい話になってしまいましたね。
おじさんとは説教が好きな生き物なのです。
それでは、また。