スカベンジャーの標本部屋

本業は看護師ですが、趣味で動物骨格標本を作成しています。

角のある子

 日曜日の夕方、『肉』と書かれたデカ重い箱が届きました。

 

あやしい中身

 

デカい鍋に入れて一日半解凍します

 

立ち位置間違えて影が…

 

 今回届いたのは『ピグミーゴート』いわゆるミニヤギでした。

 動物園などのふれあいコーナーでおなじみの動物でペットとしての人気もあり、珍しい種ではありません。でも、こと標本となるとヤギの頭骨は販売されていますが、国内で全身の骨が売られている例はほとんどありませんので、貴重な資料であることは間違いないでしょう。

 この機会を提供してくださった飼い主様と仲介者とヤギに感謝と敬意をもって取り扱わせていただきます。

 

 先述の通り家畜としてだけでなく愛玩動物としての認知度も高いので、ヤギの解体に抵抗がある方は今のうちに引き返しましょう。

 今回も赤い画像が多めになります…

 

 尚、今回この記事を公開するにあたり先に説明しておくことがあります。

 ヤギは『と畜場法』という法律の対象とされています。この法律は食用を目的とした獣畜(牛、馬、豚、めん羊及び山羊)の解体やそれに伴う廃棄物の処理などに関する規則や措置を定めることで、食品や廃棄物を介した国民の健康被害を予防する目的の法律です。

 この法律の第十三条には『何人も、と畜場以外の場所において、食用に供する目的で獣畜をとさつしてはならない』『2項 何人も、と畜場以外の場所において、食用に供する目的で獣畜を解体してはならない』とあります。つまり「と畜場以外の場所でヤギを屠殺すること、と畜場以外の場所で解体したヤギを食べることは禁止ですよ」ということです。

 では、今回私が自宅でヤギを解体するのはどうなのか?となりますが、この法律では「食用に供することを目的とした解体」が対象であるため、食用を目的としない解体は対象外であると解釈しております。逆に言うと、一口でも肉や内臓を食べてしまったら違法となります。

 某動画サイトでは、飼育していたヤギが亡くなったので自宅(風呂場)で解体して食した人の動画がありましたが、それはアウトですね。しかも死因不明なので危険性はより高いです。気持ちは分かりますし非難するつもりまありませんが、自分の行動を公にする場合、それが法律も含め社会的にどう捉えられることなのか・どのような影響を与える得るかをよく考える必要はあるでしょう。

 

 というわけで、今回ヤギ解体の記事を公表するにあたり以下の3点を明示しておきます。

1.今回のヤギの解体は、身体構造の観察及び骨格標本の作成を目的としています

2.解体したヤギは、どの部位であっても決して食べません。また、他者にも食用を目的とした譲渡・販売はしません

3.解体によって出た肉や内臓、血液等の残滓は感染管理・公衆衛生に配慮して適切に処理します

 

 長い長い前置きがようやく終わりました。本題に入っていきましょう。

 

 この個体はまだ子どもでした。体重7.1kg。全体的に痩せた感じで見た目以上に軽く感じます。牧場の香りがすごい。

 

顔。この写真も自分の影が邪魔に

 虚ろな瞳が切ないです。

 

前肢 

 蹄もまだ未熟で、柔らかく綺麗です。副蹄もゴムみたい。

後肢

 

メスでした

 

皮を剥いた状態

 やっぱり痩せてますね。

 

前肢

 

後肢

 前肢後肢ともに筋肉の張りがなく、骨が浮き出ており、触るとぶよぶよと水っぽくスライムのような感触です。

 私の経験上、老化や病気などで衰弱した動物の筋肉はこのようになることが多いように思います。不謹慎な表現ではありますが、終末期のヒトの筋肉も同様の感触です。

 動物もヒトも病気や老化によって生じる身体変化には共通する点も多いため、動物の観察や実験は医学にも活かされてきました。なので動物の身体を知ることは看護師として患者をケアする際に活かせることもあるかもしれません。

 

 口腔内には草が残っていました。

 

内臓

 左側の大きな袋が胃です。ガスでパンパンに膨らんでます。

 右側にあるのは膀胱と直腸です。

 

気管~肺・心臓

 

 開いてみます↓

 

第一胃(ミノ)

第二胃(ハチノス)

第三胃(センマイ)

第四胃(ギアラ)

 焼き肉ではミノとハチノスが好きです。

 

肝臓と胆嚢

腎臓(左側は開いた状態)

腎臓開きのアップ

最終的にこうなる

 

 身体は痩せていましたが餌は食べていたようで、素人目には死因を特定できるような所見を見つけることができませんでした。

 この後はいつも通り、排水溝ネットと野菜ネットに入れて水に浸けます。

 

 この日は宿直明けでして、宿直って24時間勤務なんですよ。その後で炎天下の長時間作業。めちゃくちゃ疲れました。

 

 それでは、また。