スカベンジャーの標本部屋

本業は看護師ですが、趣味で動物骨格標本を作成しています。

ナマケモノ(一応)完成

 暑い日が続いたおかげでナマケモノの脂も良い具合に抜けたようです。

 

 

全体

 手根骨や指は出していません。

 やはり肋骨は数や二段式になっていることなど奇妙ですね。

 椎骨に対して四肢の骨が長く頑丈な印象です。

 

左肋骨

 前の方は肋骨の関節(?)が癒合しており、10番目から分離しています。他の動物だと肋軟骨にあたる箇所だと思うのですが、肋骨本体と分離した肋骨とは軟骨で繋がっていて胸骨まで直接伸びていました。

 これについては情報不足で理由はわかりません。

 

骨盤

 仙骨の形も奇妙ですが、他の動物と同様に仙椎が複数繋がって形成されているのがわかります。仙骨は腸骨と仙腸関節(赤枠)でつながってるのに、さらにその先で座骨(青枠)ともつながっています。

 この個体はメスですが、仙腸関節も恥骨結合も完全に癒合しており出産の際に広がらないので大きな子は産みづらそうです。

尾椎

 存在感がほとんどなく、作りも雑です。

 

左前肢

 肘関節の嵌まり方は浅く、上腕骨と橈骨の遠位端が広がった形状も不思議です。

 

左後肢

 大腿骨頭は若干前向きで周囲の凹凸も少ないです。

 脛骨と腓骨の間が開いています。ここには筋肉が詰まっていたわけではなく丈夫な膜が張られていました。

 

 肘や膝の関節を見てみると、陸上の四足動物に比べて関節の作りが甘いように見えます。他の四足動物は上からかかる自重を下で支える構造なのに対し、ナマケモノは懸垂した状態で自重を支えるための構造になっているのでしょう。

 

頭骨

 歯並びだけ見るとトドのよう。犬歯だと思ってたのは臼歯らしいです、知りませんでした。ってことは、ナマケモノには臼歯しかないんですね。

 この臼歯は上下が擦れ合うことで鋭利さを保っているようです。イノシシやアナグマの犬歯と同じ。

 さらに歯槽骨には上下の歯が収まる窪みがあります。顎を動かすと歯がきれいに収まって気持ちいいです。

 

頭骨の内部

 ファイバースコープで中を覗いてみました。カメラの形状の都合でこの角度でしか撮れませんが、内部もシンプルな構造で外部と繋がる孔が少ないです。

比較用にイヌの頭骨内部

 

篩骨

 薄い膜でできた袋状の篩骨も珍しいです。

イヌの篩骨


あと指

 真ん中に何かあります。一般的には左端から順に中手骨⇒基節骨⇒中節骨⇒末節骨となるはずですが、これは基節骨なのか?

 おそらく屈筋の腱を支持するための機能をもつのかと思われます。写真を撮っていませんが指骨の掌側にも明瞭な溝がありましたので、『指を曲げる』『曲げた状態を維持する』ことに力を注いでいるのでしょうね。

 指骨の関節面は肘や膝に比べて明確で、気持ちいいくらいピッタリ嵌ります。

 

 色々感想はありましたが、まとまらなかったので『生物の身体って面白いですね』と締めておきます。