スカベンジャーの標本部屋

本業は看護師ですが、趣味で動物骨格標本を作成しています。

骨格標本の作り方②

 今年は5月なのに20℃超えの日が多く、夏が思いやられます。でも、気温が高い方が骨格標本作りには都合が良いので作業も捗りますね。
 というわけで、前回は標本材料となる動物の入手方法をご説明しましたので、今回は骨格標本の作り方をお話ししていきます。

 しかし、本やネットでも既に情報は出回っているので、詳しい方法は他に譲ることにして、それぞれの手法について個人的な見解を述べていくこととします。

①茹でる
 ポピュラーな手法の一つ。鍋に入れてひたすら茹で、肉や腱などの軟組織を骨から剥がしていく方法です。台所洗剤や重曹を入れる場合もあります。
 対象動物が入るサイズの鍋さえあれば、大抵の動物で可能ですし、野外でドラム缶を使えば大型動物もできます。
 一番のメリットは、他の手法より短時間で骨格標本が作れるということでしょうか。よほど大きな動物でなければ半日も茹でれば大抵の肉は除去できますよで、早く完成させたい方にはお勧めです。
 また、任意の状態で引き揚げることで関節を残すことができるので、組み立ての手間を省くこともできます。
 反対にデメリットとしては、個人で行う方の多くは家庭のキッチンを使うことになると思うので、衛生面や匂いの問題があったり、同居者の了解が必要だったりします。さらに、茹でている間は離れられないので、時間に余裕がなければ作業できないことも課題となります。
 ちなみに私はこの方法を好みません。妻は了解してくれるけど、遺体を処理する行程を見せることや茹でる匂いなど妻に不快感を与えたくないので妻の在宅中にはできませんし、灰汁や脂肪、体毛などこびりついた鍋を洗うのは面倒、茹でるだけでは骨の中(骨髄)の脂肪が抜けきらないなどの理由もあります。
 時間に余裕がある時は便利でいいんですがね。  

蛋白質分解酵素で溶かす
 こちらはパパインなどの食品用の蛋白質分解酵素を使うパターンと、入れ歯洗浄剤を使うパターンとがあります。
 ある程度除肉した骨をぬるま湯に浸けて酵素を投入するだけ。酵素の種類や標本のサイズ、温度などにより時間は異なりますが、茹でる方法の次に早くできる方法でしょう。
 関節を残せるので、魚類や爬虫類、両生類、小型哺乳類に適しています。
 酵素には活発に働く温度(至適温度)がそれぞれありますので、その温度を保つ必要があります。それ以上でも以下でもうまく働かず、効果が得難いので、この方法で失敗した場合は温度管理に問題があったと考えられます。他には酵素の量とか。
 岩手は北国なので冬場はヒーターで暖めなければなりませんが、私はそこまでできないので夏限定としています。

③虫に食べさせる
 乾燥系(ミルワームカツオブシムシなど)の虫と、湿系(ウジ)の虫との2パターンあります。
 乾燥系のメリットは、虫の繁殖が可能なので環境さえ整えられれば年中可能な方法となります。またこれも関節を残せるので小型の動物に向いています。ただし、カツオブシムシは他の標本に食害を与えるため逃走には細心の注意が必要です。またミルワームは肉が乾燥しすぎると食いが悪くなるので標本の湿度管理が必要になります。
 湿系は水に半分浸けた状態で放置しておけばハエが集まり産卵し、生まれたウジが食べてくれます。
 メリットは腐敗も同時に進むため軟組織を全て除去できること、骨髄の脂肪もきれいにとれることが挙げられます。解体や除肉は大雑把にやっても大丈夫。剥皮さえしておけば内臓残しててもやってくれます。
 デメリットとして、何よりハエがたかることや匂いが強いことから場所によっては家族やご近所さんに迷惑がかかります。あと見た目がよろしくない。関節を残すこともできません。ハエの活動する時期しかできないのも残念なところです。
 でも私は全ての方法の中でもウジに頼むのが一番好きです。大量のウジが蠢きながら遺体を食い漁る光景も好きですが、一番きれいに骨をとれると感じているからです。まあこの辺は人それぞれですね。

 長くなってしまったので、今回はここまで。他の手法はまた次回。

 それでは、また。

*おまけ
f:id:scavengerns:20210531153230j:plain
藤の花とクマバチ