スカベンジャーの標本部屋

本業は看護師ですが、趣味で動物骨格標本を作成しています。

病院の中の介護福祉士

 今日は熱く語らせていただきます。そして長いです。

 看護師は病院に勤務する職員の中で最も多い職種であり、医師を除けば唯一医療行為が許されている資格でもあります。そのため、病院における看護師の立場は他の職種よりも高いものと見られがちです。
 しかし、それ故看護師自身が他の職種に対してマウントをとったり、他の職種の人達が看護師には低姿勢になる場面も見られることがあります。

 看護の専門職としてプライドを持つことは大切ですが、それはどの資格・職種にもあるものなので、私は『看護師は特別である』という認識を持たれることを好みません。
 特に病棟という空間では、患者さんの治療の支援、生活の援助にあたっているのは看護師だけではなく、看護補助者(あるいは看護助手)や介護福祉士もいますので、これらの方々がいるおかげで我々看護師は自分のパフォーマンスを発揮できているとも思っています。

 精神科単科の当院では、かつて介護福祉士の資格を持っている方も看護補助者として採用されており、雇用形態、院内での肩書き、業務内容など各種取り扱いは有資格者のそれではありませんでした。その後、積極的に介護福祉士の採用を進めるにあたり正規雇用となり、肩書きも介護福祉士に改められましたが、実際の業務内容は看護補助者と同じままでした。
 こうした状況は自他共に『看護師より下、看護補助者より上。でも看護師ほどの業務はできず、看護補助者より際立った業務もできない曖昧な自分』という立場を作り、介護福祉士にとって大きなジレンマを抱かせることになっていました。
 
 という看護研究をかつて発表したことがあります。

 介護施設や在宅介護などの現場ではメインワーカーとして活躍しているのに、病院では身を縮めて声を潜めてしまうのは、介護福祉士自身だけでなく、患者さん、看護師ひいては病院組織全体にとっての不利益でしかありません。
 この研究結果を踏まえて、介護福祉士だからこその精神科病院での役割を明確にし、彼ら・彼女らの認知度と地位の向上を目指し、院内の管理者や教育委員会などに掛け合ってきました。
 そして数年前に実現したのが、介護福祉士による新入職員に対する研修(新任研修)でした。

 昨日は私も介護福祉士2名と共に講師の一員として研修に入らせていただき、新人看護師&看護補助者に介護技術を伝授してきました。
 お話を聞きながら、やはり介護の専門職なので、理論だけでなく患者の個別性や病棟の環境まで考慮して介護するという点において、看護師より高い意識を持って働いていることが窺えました。
 今回の研修を通して、新人さん達も安全・安心な介護を実践して患者さんに信頼されるスタッフとして成長できたらいいなと思いますし、介護福祉士という役割を認識して頼りにしていって欲しいとも思います。

 講師をしてくれた2名は院内研修の講師も初めてだったのでかなり緊張していました。研修前、「私達が看護師さんに教えるなんて(恐れ多い)…」と話していましたが、日頃から看護師の行っている介護技術に対して思うところはあったけど、言えないモヤモヤを抱えていたようなので、それを自分の言葉で伝える機会がもてたことを喜んでくれていました。

 今回は介護福祉士にスポットを当てたお話でしたが、もちろん看護補助者にも役割と立場があります。
 看護補助者は資格がなく、医療現場で働くのも初めてという方がほとんどで、OJTをメインに仕事を覚えながら業務にあたっており、介護福祉士よりも職場内での自己効力感が低いように感じます。しかし、看護師よりも患者さんのそばに居て些細な変化や情報もつぶさに見出だして報告してくれることで、我々も患者さんの状態変化に早期に対応することができるのです。
 また、看護補助者達は「汚れ仕事や洗い物は自分達の役割」と思って、汚物などの処理や器具の洗浄などを率先して引き受けてくれたりもしています。本来はそうではないのに…。

 看護師の存在感に隠れて見えにくいですが、やはり看護補助者も病棟運営になくてはならない存在ですし、それぞれの職種が対等に関わりあえる働き甲斐のある職場を作っていきたいですね。

 万が一病院に入院するようなことがあった時には、医師や看護師の他にも色々な人が患者さんの療養生活を支えていることにも目を向けて欲しいものです。