普段私が遺体を捌く時は骨のみ取り出すことを目的としているので、作業は「解体」でしかありません。
昨日は久しぶりに損傷の少ないタヌキを拾いました。最近はきれいな遺体は寄贈しているのですが、遺体を適度に扱っていないと腕が鈍るので、今回は自主練習も兼ねて、「解剖」をして内臓の様子を観察してみました。と言っても所詮は素人。手技も写真も下手くそなのはご存知の通り。
注:いつも以上に露骨な写真が満載となります。耐性の無い方は引き返してください。
妻から夕飯のリクエストが餃子だったので、娘のお迎えまでに下拵えしておくため、後始末にかかる時間も考慮して、タイムリミットは14時に設定。作業可能時間は4時間半!
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今回の主役。若いタヌキ(♂)
国道の路肩で亡くなっていました。出血はなく、触っても骨折している感じはありません。
お顔
ダニが離れ始めています。
毛先に登るダニ
宿主の死を感知し、次の宿主に取りつくべく毛先で待機するつもりです。アルコールスプレーをかけておきます。
尾
疥癬ではなさそうですが、尾だけ脱毛があります。
剝皮した状態
時期的にも場所的にも餌は豊富なはずですが痩せ気味です。四肢の筋肉には張りがなく、骨盤も浮いてます。肉質は水っぽく、ブヨブヨ。滑るので捌きにくいったら。
かなり高齢なシカを捌いた時も筋肉が水っぽくなっていたけど、これはそれとも違う感じです。
左の頸部に謎の組織
別の角度からも
筋肉でも怪我でもない、ピンク色のドロドロした組織がありました。筋肉にも浸潤しています。なんでしょう?
左側の肋間筋と腹膜を除去した状態
腸がガスで拡張した圧ではみ出してしまいました。
腸とその辺
胸郭
心臓と肝臓の間に血が貯まっています。この辺りの臓器が損傷したようです。
肋骨を除去
肺と心臓が見えやすくなりました。
気管と肺と心臓
矢印が心臓です。写真が下手で見辛いです。
肝臓と胃、脾臓
左側の赤黒いのが肝臓。真ん中の白っぽいのが胃。胃の右側の赤黒いのが脾臓です。
肝臓(裏側)
肝臓に損傷があり出血した跡があります。肝臓破裂による出血性ショックで亡くなったのかもしれません。
白い斑点が散らばっています。感染性疾患かと思いましたが、中までは確認しませんでした。
胃
痩せてる割りに胃はパンパン。何が入っているのかな?
胃内容物
大半は黄色い果肉が占めています。ビワっぽいけど自信はないです。あとは溶けたヒミズが2~3匹。
頭(肉有り)
頭(肉無し)
タヌキは丸顔のイメージを持たれることが多いけど、毛がなければ細いです。
まだ若いこと、痩せていることもあり、頭部の筋肉も薄いですね。
肩甲骨(まぎらわしいけど、右が左肩甲骨。左が右肩甲骨です)
骨折していたのは右肩甲骨と肋軟骨1本のみ。骨折による変形もあるのでしょうが、それでも左と比べると元の形がおかしいです。
といったところで、時間切れのため後は徐肉し、パーツ毎に排水溝ネットや出汁パックに分けて保管しておきました。
膵臓は傷付けてしまい、生殖器はうまく撮れなかったので載せません。
餌は摂れていたのに痩せていたのは、何かしら疾患を患っていたからなのでしょう。肝臓の白斑が原因かとも思われますが、先にも述べた通り、獣医ではないただの素人なので、関連性はわかりません。頸部の組織も何だったのか…
色々課題は残りましたが、学習の機会を与えてくださったタヌキには心より感謝しています。
遺体を沢山扱っていると、死に対する感覚は麻痺してくると思われそうですが、むしろ逆です。遺体を観察していくと、同じ種の動物でも1個体ずつにそれぞれ独自の生涯を経てきたことがわかります。「ここで死ななければ、どんな一生が送れたのか」と、そんなことを想像させられ、死を悼む気持ちは増していきます。
私の活動は仕事でも研究でもなく、一個人の趣味の活動です。しかし、亡くなった動物の死を無駄にしないためにも、標本を残すこと、得られた情報を発信し共有することは今後も続けていきたいと思います。
あと、今回は感染症の可能性があるため焼却処分としましたが、疾患の所見のある組織や臓器が欲しいという方がいたら、お知らせください。
それでは、また。
*おまけ
赤い画像ばかりだったので、緑の画像で目を休めましょう。