今回のテーマはもっと早いうちにやるべきでしたが、タイミング逃してしまいました。
本当は4月がいい時期だったんです。
さて、春しかできない骨格標本の作り方とは?
これについて話す前に一般的な骨格標本の作り方を紹介しますね。詳しくは他にも説明してくれてるホームページや書籍がありますので、ここでは簡単な分類だけ。
(いずれお話したいと思いますが)
骨格標本は、脊椎動物の皮膚、筋肉、内臓などの軟組織を除去して、骨を取り出し保存するのですが、主に軟組織の除去方法によって作り方が分けられています。
①タンパク質分解酵素、アルカリ性製剤に浸ける
②煮込む
③カツオブシムシ、ミルワームに食べさせる
④蛆虫に食べさせる
⑤土中や砂中で腐らせる
⑥水中で腐らせる
⑦風雨に晒す
などが一般的な方法です。いずれも長所短所がありますし、対象の動物種や状態、作りたい標本のタイプ、標本作成環境、作成者の好みなどによって方法が選ばれます。
しかし、私が今回ご紹介するのは上記のいずれにも当てはまらない方法で、他にやっている方のお話も聴いたことがありません。
その方法とは
『おたまじゃくしに食べさせる』というものです。
ある日、アカガエルのおたまじゃくしとドジョウを飼育していたプランターを覗いたところ、白骨化したドジョウ(約4㎝)が底に沈んでいるのを発見しました。
(死んだドジョウがおたまじゃくしに食べられたのか?)と思い掬い上げてみると、全身の肉がきれいになくなり、そのまま骨格標本として残せる状態になっていることがわかりました。
そこで、おたまじゃくしによる骨格標本作成を思いつき、いくつか試してみました。
①もっと小さい魚ではどうか?
②もっと大きい魚ではどうか?
③哺乳類ならどの大きさまでできるか?
④爬虫類や両生類でもできるか?
当時の条件として、
・縦60㎝×奥行20㎝のプランターで水深約10㎝。
・底は田んぼの土。
・おたまじゃくしはアカガエル約50匹。
でした。
結果
①メダカの死体を投入したところ、一晩で白骨化。背鰭・腹鰭は紛失。
→可能だが、他の骨と繋がっていない鰭は予め外しておいた方が良い。
ドジョウとメダカ
②体長15㎝のウグイを投入。丸一日で白骨化。(背鰭・腹鰭は残ったが、乾燥中に紛失)
→可能。鱗の固い種やより大きな種では予め皮を剥がしておいた方が良いかもしれない。
ウグイと煮干し
③アカネズミを剥皮、内臓と大まかな肉を除去、頭骨を頸椎から外して投入したが、丸2日おいても肉はあまり減らなかった。
次にアカネズミを同様の処理をした後、60℃のお湯で湯通しして投入。丸1日で全身白骨化。関節と脳は残る。
→可能。但し生では食いが進まないため一旦軽く茹でる。
関節が残るので回収後は展肢するだけで完成する。脳はそのまま乾燥させれば目立たなくなるが、気になるならさらに数日水に浸けて腐らせるかポリデントで溶かすと良い。
アカネズミ(姪に握り潰され肋骨骨折)
タヌキの頭部・四肢を剥皮、大まかな肉と眼球・舌を除去して、20分茹でて投入。数日置いても食べきれず。
→中型以上の哺乳類では不可能。大後頭孔から脳を食べてくれるかと期待したが、それもダメだった。
肉の固さや量がおたまじゃくしの摂食能力に合わなかったかも。
④おたまじゃくしが上陸するまでに死体が入手できなかったため試せず。
→小型の魚類、哺乳類で成功しているのでサイズや前処理により可能と考えられる。
以上のことから、おたまじゃくしによる骨格標本作成はサイズや前処理次第で可能であるとこがわかりました。
以下に利点・欠点をまとめます。
*利点
①通常では作成困難な小型種の骨格標本も作成できる
②カツオブシムシやミルワームと同様、関節を残せるため展肢が容易
③カツオブシムシやミルワームよりきれいにムラなく食べてくれる
④水中で作成するため腐敗臭がしない(水質維持は必要だが)
⑤入手が容易で費用もかからない
⑥薬品を使わないため環境に優しく、標本も傷みにくい
⑦餌に群がる姿が可愛い
*欠点
①作成できる標本のサイズに限りがある(おたまじゃくしの数、水量などにもよる)
②前処理が必要
③細かい、分離しやすい骨や鰭は紛失するため分ける必要がある
④おたまじゃくしの飼育スペース確保が必要で、飼育の手間がかかる
⑤おたまじゃくしの時期が限られるため、期間限定となる
他のカエルのおたまじゃくしではまだ試したことがないので、全てのおたまじゃくしでできるかも未知ではありますが、個人的にはとても良い方法だと感じています。
皆さんも是非試してみてください。
但し、目的を果たしたらおたまじゃくしを元の場所へ返すことを忘れずに。生物を扱う者として最低限のマナーは守りましょうね。
それでは、また。